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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年4月16日付け

 リオ州のモーロ・ド・ブンバの土砂崩れで200人が生き埋めになった事件の記事を読んでいて驚いた。ゴミ捨て場だった場所を不法占拠して勝手に家を建てた住民の自己責任だと思っていたら、「占拠した者に罪はない。占拠させていた側(市)こそ責任を問われるべき」との考えが公に表 明されていた▼ブラジルにはUsucapiao(ウズカピオン)という有名な法律がある。「ある一定期間にわたって土地を占拠した者には、その地権を得る権利ができる」というもので、その期間は5年とも10年ともいわれる▼つまり誰の土地だろうが使っていない土地には、無断で侵入して実際に使っている人に使う権利を発生させようという発想だ。件のファベーラのような無断占拠を奨励しているとすら解釈できる。広大な国土を持つ新大陸ならではの考え方か▼しかし、先祖代々猫の額のような土地にしがみついてきた伝統的な日本人の発想とは相容れない部分があり、その法思想をすんなりとは納得するのは難しい▼その記事曰く、市側はファベーラ住民を危険地帯から退去させる義務がある。退去させるためには、前もって住宅を用意しなければならないとある。不法占拠した人を退去させるのに、そんなに至れり尽くせりの環境まで用意せよという。占拠したもの勝ちと言えなくもない▼しかし、どう考えても行政がそこまで実際にやることは考えにくい。「法律は法律、現実は現実」という壁がある。法があっても執行されない状態がざらにあるという現実も、遵法思想の強い日本人にはわかりにくい。この国の本質を理解するには何年かかるのだろうと考え込んだ。(深)

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