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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年4月21日付け

 先に放送されたグローボTV局の人気番組BBB10を見ていて、ブラジル人に人気のある人物とは、ひとつの人格の中に「天使」と「悪魔」の両 面性を激しく持っている人だと感じた。よく西洋のアニメで、主人公が何かの選択に困ったときに、頭の上に天使と悪魔が浮かんで言い争いをする描写があるが、あれが実にピンとくる▼もちろんどんな人にもその両面性は備わっているが、日本人なら安定的に「天使」であろうと努力し、やせ我慢することが尊い態度と考えがちだ。だがブラジル人は逆に不安定で両極端に揺れ動く激しい気質を持っているラテン的性格ほど共感を呼ぶらしい▼同TV番組で真っ先に落とされるタイプは、真面目でおもしろみのない「天使」的な人物だ。逆に、何度もパレドン(落選試験)に送り込まれても不死鳥のごとく復活してくるのは、徹底的に相手を面罵する品性の悪さを持つ「悪魔」的気性の人物だ▼ノベーラ(ドラマ)しかり。大半の主人公には三角関係や裏切りが付き物であり、品行方正な人物ではない。TV番組を見る限り、まっとうなことしか言わない面白みのない人物は「偽善的」と映るらしい。ふつう日本人的には真面目さ、誠実さ、勤勉さを特質として自他共に認めているが、これはブラジル人的には「面白みがない」人物像でもあるのだろう▼ボス肌のルーラ大統領はカリスマ性が高く、真面目なアウキミン元サンパウロ州知事は「ピコレ・デ・シュシュー(うま味のないアイス)」と言われたのも、この国民性ならではだろう▼今回の大統領選ではどちらも「天使」タイプか。上手に「悪魔」ぶりをチラつかせた方に人気が集まるのかも。(深)

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