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ニッケイ新聞 2010年5月11日付け

 コチア青年親睦旅行に参加した平川行男さん(83)は、ペルー生まれ。フジモリ元ペルー大統領より1世代上の同国2世だ。戦前のリマには領事館が運営、日本から教師が派遣された「実習館」という教育機関があり、平川さんもそこで学んだという。しかし「親は出稼ぎのつもりだったから」小学校2年生で親の故郷福岡の学校へ。第2次大戦中、父親は米国内の収容所へ入れられたそうだ。戦後、「コチア青年で渡伯しようとしたが、農業経験がなく農協で断られ」、30歳で力行会を通じて渡伯。さまざまな職業を経て、日本でも働き現在はアポゼンタードだ。兄弟は日本、ペルー、ブラジルにそれぞれ住んでいるとか。「また日本へ行こうと思っているんですよ」と呵呵大笑。
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 イグアッペでのカムカムフルーツ栽培は、80年代、水害でバナナが打撃を受けたことから始まった。マナウスから苗を買って始め、10数年間栽培を続けているという。現在も栽培に従事するコチア青年の高橋義明さんは、「気候はあっている」と話し、「まだ知られていないから売れ行きはよくないですね。伸びてくれればいいけど」と笑顔を見せていた。
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 やはり延期された百年史農業編。農業で大きな役目を果たした日本移民をブラジル人は、「真面目、誠実、正直」と評するが、その100年の歴史をまとめようとした人間が真逆の性質を持っていたのは、何とも皮肉。中途半端なものができるより良かったかも―と思うしかない悲しい結果。

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