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「中国の次はブラジルの時代」=商議所昼食会=竹中元大臣大いに語る=「日本経済の活性化可能」=今のうちに日伯関係強化を

ニッケイ新聞 2010年10月12日付け

 8日にサンパウロ市内ホテルで行われたブラジル日本商工会議所(中山立夫会頭)の定例懇親昼食会で、小泉政権下で金融担当大臣、総務大臣などを歴任した竹中平蔵慶応義塾大学教授が「世界における日本とアジアの役割」について特別講演をし、世界経済の中で「中国の次にはブラジルの存在が大きくなる」と論じて日伯の関係強化に向けた取り組みを訴え、160人の来場者は熱心に聞き入った。

 昼食会は通常100人ほどの参加者だが、今回は竹中氏の講演目当てで多く集まった。中山会頭は竹中氏を、「国家、経済の諸問題を簡潔明瞭に表してくれる」と紹介しつつ、現状のままでは日本の将来のあり方に不安を抱かざるを得ない胸中を吐露し、マイクを渡した。
 「ブラジルには大きな思い入れがある」。竹中氏の講演はそんな言葉から始まった。世界でも突出した多機能な携帯電話に代表されるような、独自の発達を遂げている日本の先端技術。その独自さゆえに海外普及に困難さがあり、ハイテクの〃ガラパゴス〃といわれている。
 日本式地上波デジタルTV放送もその一つで、「それを海外に出したかった。それを受け入れてくれたのがブラジル」と振りかえる。総務大臣時代の06年、自ら来伯してデジタル日伯方式の署名をした。その後、「南米の主要国に広がり、アジアでもフィリピンが採用してくれた」と誇らしげに語り、「残るはアフリカ」と期待を込め、「そんなきっかけとなったブラジルに感謝している」とのべていた。
 竹中氏は「日本の経済活性化は可能」と語気強く論じ、「ここ半年で日経平均株価は16%下がった、それは政治不安によるもの。だが止まらない円高で、皆さん不安な気持ちでしょう」としながらも、世界に誇る環境技術や多額のR&D投資(研究開発投資)、資本、人材等が日本にはあると説明した。
 「ただし、リーダーシップがない」と釘を刺し、小泉政権時代の株価の上昇を例に上げ、「その有無で日本はどうにでもなる」と強調した。
 菅直人内閣総理大臣について、「政権交代はいいことだが、民主党は未成熟で既存のものをすべて否定しようとした。でも菅さんは運が良い。年に3回も総理が交代しそうになり、国民は『誰でも良いから変わらないでくれ』と思っているだろう。そして今後は脱小沢氏や政策の見直しを図る余地がある」とした。
 8年後には中国のGDPが日本の倍になり、元レートの上昇次第では想像以上に早くアメリカも抜く。だが一人っ子政策で労働人口の減少が考えられるとし、「世界経済の長期的停滞の予感がある。経済の停滞が社会の不安定を生み、政府が国民に頼り過ぎてしまう懸念がある」と述べた。
 午前中にサンパウロ大学で行なわれた講演会で「日本の経済は中国に偏りすぎていないか」という質問があったと紹介し、「待ってましたと思った。近く訪れるであろう中国の成長にかげりが見えた時、ブラジルは大きな存在となる。その時のために関係強化が必要。そしてその主役は皆さんです」と会員らを激励し拍手の中、壇上を降りた。

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