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■新年のご挨拶=財団法人 海外日系人協会=理事長 田中克之

特集 2010年新年号

ニッケイ新聞 2011年1月1日付け

 新年あけましておめでとうございます。ブラジルに在住される皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えのこととお慶び申しあげます。
 昨年4月に海外日系人協会の理事長に就任し、11月に13年ぶりにサンパウロを訪問する機会がありました。懐かしいコロニアの皆様に再会し、ほっとすると同時に、今やBRICsと呼ばれる経済新興国の一つとしてめざましい発展を遂げているブラジルの姿を、ビルが立ち並ぶ街の風景や人々の行き交う様子から実感しました。
 さて、海外日系人協会は、海外日系社会と日本との「橋渡し」をすることをその第一義的目的とし、これまで海外日系人大会や各種の事業を行ってきているところですが、昨年10月に開催した「第51回海外日系人大会」においては、日系社会を取り巻く環境にも大きな変化を改めて認識させられる結果となりました。
 まず一つめの変化は、日系社会の世代交代が進むにつれ、日系人としてのアイデンテイテイーが希薄化し、また日本との間のコミュニケーションの密度が薄れてきていること。
 併せて、これまでとは異なる形で欧州やアジアに新天地を求める人が増えた結果、日系社会の地理的範囲が拡大し、そして日本に対する関心事も、これに応じ多様化してきていることです。
 第二は、日本国内の、ブラジル・ペルーを中心とした南米日系人の状況です。危機による雇用情勢の悪化は、日本に残ることを決めた日系人の皆さんに就職難を強いているのみならず、経済的困窮による不就学児童の増加という問題も生起させています。
 十分な日本語能力がなければ、再就職は勿論のこと日本社会での生活自体が困難になっています。
 昨年8月末に内閣府が日系定住外国人を日本社会の一員として受け入れていくための考え方や施策の方向性を定めた「定住外国人施策に関する基本方針」を発表したことは大変時宜にかなったものであると考えていますが、このような日系社会を取り巻く環境の変化、複雑化を前にして、海外日系人協会も時代の要請に応えられる存在でなければなりません。
 日系社会が直面する諸問題やその解決の方途を語ろうとすれば各地の日系社会の皆様方のご理解とご支援を頂くことが必要不可欠となります。その意味でも、日系社会の皆様方からもどしどしご意見を頂ければ幸いです。
 皆さまの、本年も変らぬご健康とご活躍を、心よりお祈り申し上げます。 2011年元旦

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