ホーム | 日系社会ニュース | リオ大水害=善意の連鎖で物資届ける=3トン分を被災地まで=「3日間でこんなに!」=感謝する現地慈善団体

リオ大水害=善意の連鎖で物資届ける=3トン分を被災地まで=「3日間でこんなに!」=感謝する現地慈善団体

ニッケイ新聞 2011年1月25日付け

 「3日間でこんなに集まるとは—」。援協(森口イナシオ会長)、文協(木多喜八郎会長)、県連(与儀明雄会長)が一緒になってリオ大水害被災地への支援物資の寄付を呼びかけてから、わずか3日間で心のこもった支援物資が3トン分も集められ、援護協会の菊地義治副会長はそう感謝し、目を細めた。23日現在で死者810人、行方不明者469人に達し、避難者は2万3千人以上に達したリオ州山間部の大水害。サンパウロ市の日系社会から差し伸べられた支援物資と共に最大の被災地となったノヴァ・フリブルゴを訪ね、現地の様子を取材した。(長村裕佳子記者)

 被害発生から11日目の22日、いまだ遺体が残っているとされるノヴァ・フリブルゴ市中心部の瓦礫からは腐臭が立ち込め、閑散とした街では次々と瓦礫を運び出すトラックが出入りを繰返していた。
 リオの山間部では、道路下の傾斜面に見える屋根まで土砂で埋もれた家々が豪雨の勢いを物語る。同市では被害が郊外だけでなくセントロにまで及んでいた。
 市中心部を通る川べりに崩れた住居が立ち並び、中央広場から一本裏通りに入ると、医者も住んでいたという高級アパートが丸ごと崩壊した瓦礫の山が現れ、腐臭が鼻を刺すようだ。
 そんな被災地に対して支援の手を差し伸べようと、日系団体の御三家が協力を呼びかけた。19日から21日午後8時までに続々と支援物資が届き、計3トンに及ぶ支援物資は米300キロ以上やフェイジョン、砂糖、マカロン、パネトーネの食料品のほか何十キロもの衣類、トイレットペーパーなどの衛生用品が集まった。70以上の日系団体・個人からの善意で、匿名での寄付を行った人も多かった。
 21日夜、7トントラックに積み込まれた救援物資はリオへ向けて出発。援協の菊地副会長、八巻和枝福祉部長、野々村晃広報渉外室長らが現地へと向かった。途中リオ市内に立ち寄り、リオ州日伯文化体育連盟(明義理事長)にすでに集まっていた救援物資もトラックに積み込んだ。善意の連鎖だ。
 23日午前、現地の慈善団体Grupo de Promocao Humana (GPH)まで持っていった。GPHは、今回の災害で被災者の生活支援に約50人のボランティアで特別な物資供給活動を行っている。市の協力を得るGPHは被害の多かった近隣5地域の被災家族リストを作成し、家族の人数に合わせて各家庭まで物資を振り分けている。
 「今までキャンペーンを続けてきたが、ここにはあまり寄付が届かなかった」と話す担当のソニア・カブラウさんは「こういった協力が違いを生む」と感謝を示し、ハンス・ロンパ会長も「やはり日系社会の活動は違う」と賞賛した。
 日系社会からの寄付の受け渡し先を吟味していた菊地副会長とノヴァ・フリブルゴ日伯文化体育協会の渡辺求(もとむ)会長は、「物資の配布にコントロールがあることが大切。きちんと信用できる機関に受け渡すことができた」と期待を込めた。
 「食べ物がなく、着の身着のまま家を飛び出した被災者を一人でも多く助けたい」との想いが日系社会全体を突き動かした。従来はコロニア内部での助け合いが中心だったが、今回の大水害を機に一般社会との連帯感を強めたといえそうだ。

image_print