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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年2月16日付け

 エジプトのムバラク大統領が辞任し、軍最高評議会が実権を掌握した。政治混乱による緊急時に政権を握って国体の安定化を図ることは、軍の究極的役割といえる▼ブラジルでも軍の評価は高い。昨年11月のGバルガス財団による「信用できる機関ランキング」の1位は軍で、なんと66%が「信用できる」と答えた。2位はカトリック教会(54%)、3位はテレビ局(44%)、「信頼できない」順位ともいえる下から見ると10位が政党(8%)、9位が連邦議会(20%)、8位が警察(33%)だ。軍や教会は信頼できるが、政治家や警察は信用できないというブラジル人の心理構造がよく出ている。つまり政治が原因で国体が混乱した時、軍が立ち上がることを許容する国民性がある▼64年3月に軍事クーデターでゴラール政権が倒されたのは、急進する左派勢力を抑えるという意味が強かった。だがその時に活動家として抑圧された世代がFHC以降、ルーラ、ジウマと大統領職に就いている▼米国の意を受けたエジプト軍部が、イスラム原理主義勢力に権力が渡らないよう〃民主化〃を進めるらしいが、時間の問題でいずれしかるべき人材が政権を握るだろう。チュニジア以来の一連の騒動は独裁政権側の問題というより、米国覇権の弱体化が真因にみえる。この流れは続くに違いない▼三島由紀夫は70年に東京の陸自総監部に乱入し、演説してクーデターを促したが逆に隊員から罵声を浴び割腹自殺を遂げた。戦後66年たっても憲法改正は果たせず自衛隊のまま…。米国弱体化の今をどう過ごす? 万が一、国体の緊急時に政権を掌握する覇気は自衛隊にあるのか。(深)

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