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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年2月25日付け

 公立医療施設にピストルを持っていって「アテンジメントをもっと良くしろ!」と脅しにいった患者がいるとのニュースを聞いて涙が出そうになった。コラム子も病気の関係で毎月ポスト・デ・サウーデのお世話になっており、その気持ちが痛いほど分かる▼地方のINSS事務所でアウシリオ・ドエンサ(病気で勤務できない人向けの給与補てん制度)の申し込みにいったまま、5カ月も待たされている間に病気が直ってしまい、挙句に職員から「じゃあ、もう働いたら」と言われて逆上し、事務所の機材を壊した人のニュースも聞いた▼いくら共感しても自分自身はそんなマネはできそうもない。でもそうやって当地式に〃主張〃してくれる人がいると、心の中では拍手を送りたくなる▼この国の年金やSUS(国営医療保険)の制度自体は感心するぐらい良い。日本なら最低25年間支払わないと年金は受給できないが、若年人口が多い当地では最低15年間だ。SUSを使えば公立病院での医療が無料になる。おまけに病気によってはタダで医薬品がもらえる▼少なくとも制度上ではそうなっている。実際にしっかり運営されていれば、素晴らしい制度だと誇れる。しかし、冒頭に紹介したような方法に庶民が訴えざるを得ない現実がある▼当国の特集をした週刊『東洋経済』を読む機会があったが、そんな現実の片鱗すらも感じられなかった。実に好意的なトーンであり有難いお話ではあるが、重箱の隅を突付いてしまう天邪鬼な記者の習性が疼く。アウキミンサンパウロ州知事の紹介記事に「〃首都〃州のトップとして強い存在感」と小見出しがあるのを見て、こんな初歩的なことが…。(深)

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