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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年3月11日付け

 ブラジルの国内総生産(GDP)がイタリアを抜いて世界7位になったことが先週大々的に報道された。これは朗報として伝えられたが、中には複雑な思いで聞いた識者もいた。クリストヴァン・ブアルケ上議(元教育大臣)は、「教育水準が世界88位のまま、どうして経済規模だけ7位を祝うなんて恥知らずなことができるのか」とさっそく釘を刺した。まったくその通りだ▼伯字紙の解説記事を読めば、GDPの60%が家庭消費で支えられているがその多くはクレジットだ。新興中流階級が今まで手を出せなかった持ち家を15年ローンで購入し、新車を月賦払いするようになったことの積み重ねだ▼金融危機後も一般国民の購入意欲が冷え込まなかったおかげでここまでGDPは伸びてきたが、その背景には教育水準の問題がある。国民全般の経済の先行き予測が楽観的だった部分は否めない。教育水準が上がるほど不況時には貯蓄が増え、消費は落ちるという先進国型の反応に将来はなっていくだろう▼ジウマ政権に課せられた過熱気味の経済発展を軟着陸させる難題は、今のところ着々と手が打たれている感じがするが、まだ安心はできない。パナメリカノ銀行に起きた不祥事発覚と身売り騒動が、ブラジル金融界全体に関係するような大きな出来事の予兆でないことを祈りたい▼「天気の良い時に屋根を直せ」とはアウキミンサンパウロ州知事がよく使う言葉だが、今こそ国民の教育向上に本腰を入れる時だ。新大統領はPACなどの箱モノ行政で手腕を発揮するのも良いが、「米百俵」ならぬ「フェイジョン百俵」の精神で公教育にてこ入れをしてほしい。(深)

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