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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年6月16日付け

 今年も移民の日を迎える。08年、移民100周年祭の熱気から3年。経つ時の早さに少々愕然とする。粛々と—サンゴンサーロ教会(午前9時)、イビラプエラ公園の開拓先没者慰霊碑(午前10時)、文協大講堂(午後1時半)で追悼事業が営まれる▼サンパウロ市近郊エンブー市では「日本週間」が開かれる。移民百周年を機に始まり、官民一体となった地元イベントに成長している。08年に再出発した日系団体もあることから、各地でこうした催しがあるに違いない▼こちら3年間、日々の雑事に追われ、移民の歴史を振り返る機会が少なかったのだが、このたび写真集『戦前活躍した移民船』(ブラジル日本移民史料館刊)を手に取った。同館で4月まで開催された展示の内容をまとめたもの。33隻が日伯間を往復した▼さんとす、あるぜんちんな、ぶらじる等有名なもののほか、初めて見る船名も。乗り込んだ人、港で見送った人、ブラジルで迎えた人—それぞれの脳裏に様々な形でこれらの船影がこびりついているのは想像に難くない。移民でないコラム子は想像するしかないのだが▼頁をめくる指が思わず止まった。日本から展示会を訪れた人のメッセージだ。「たくさんの資料を見て、日系人のみなさんの苦労に涙が出ました。いま日本は東日本大震災で大変ですが、わたしたち日本人ならのりこえられると信じています」。また違う思いで捉える人もいるのだと感じ入った▼隣の頁には、「さんとす村立尋常・高等小学校」と墨書されたマストの前に集う児童たち。コロニアの歴史を作った下船後の泣き笑いにこれからも思いを馳せたい。(剛)

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