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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年6月17日付け

 当地駐在19年のブラジル通で、著書『熱帯の多人種主義社会』(05年、つげ書房新社)でも知られる岸和田仁さんが、『ブラジル日本移民百年史』(風響社)第3巻に関して「週末の2日間かけて、この638頁もの超労作を読了したが、いずれの章も力作であり、筆者としては深い感動なしには読み進めなかった」との書評を『ブラジル特報』3月号に寄せてくれた。「いずれの章も本当に力作であり、量的にも質的にも記念碑的である」とまで▼過去の移民史中で最も厚いが、まだ全5巻の1冊でしかない。独自の視点で書かれた日系文学史(細川周平)、勝ち組系新聞『昭和新聞』『中外新聞』など従来扱われてこなかった歴史も包括した日系メディア史(深沢正雪)、日本語教育史(森脇礼之・古杉征己・森幸一)▼特に新鮮な印象を残すのは女性史(中田みちよ・高山儀子)だ。「移民した国で子供を産み育てること、その地で子供たちと生きるということは、女性にとっては新たな故郷を作る道のりともなった。海外雄飛という夢や理想を追いかけた男性のかたわらで、着実に故郷を作り、子々孫々が生き継いで行く母なる大地を体現したのは、女性たちであった」との締めの言葉は心に沁みる▼日系食文化の歴史(森幸一)も深く考えさせられる。5章それぞれが一冊の本に匹敵する。日本での定価は8千円(160レアル相当)で、通常のルートで当地に持ってくれば480レアルはするところだが、編纂委員会の配慮で特別に150レアルで日系書店(太陽堂、竹内書店、カーザ小野、高野書店)で絶賛発売中だ。ぜひ手に取ってほしい。(深)

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