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サンパウロ市の異常な大気汚染=90%の病因物質

祝103周年 移民の日特集

ニッケイ新聞 2011年6月30日付け

 サンパウロ市のような大都市に暮らしていると、どうしても気になるのが大気汚染。南米最大の経済都市で人口が多く、その市民の多くは交通手段として汚染物質の排出が多い自動車などを多用している。グローボ局で毎朝放送されている『ボン・ジア・サンパウロ』では4月からサンパウロ市の大気汚染についての特集が放送され、大気汚染による身体への影響が大きく取り上げられている。

影響は子供と高齢者に

 大気汚染とは、人間の経済的や社会的活動、火山噴火などの自然災害によって大気が有害物質で汚染され、人の健康や生活環境、動植物に悪影響を及ぼす状態のこと。サンパウロ市の大気汚染は一種の公害病を引き起こし、市民の寿命を縮める原因となっている。
 子供は免疫システムの生育が不十分なため、高齢者は身体の防御機構に問題が出始めることが原因で、特に子供やお年よりは大気汚染の影響を受けやすい。だが、それ以外の年齢層も呼吸障害を引き起こす危険にさらされている。
 サンパウロ市では結核やエイズ(AIDS)で亡くなる人の数よりも、大気汚染の影響で亡くなる人の数の方が多く、大気汚染の少ない都市に住んでいればもう少し長生きできたかもしれない人が毎年4千人近くにのぼる。

汚染物質の9割は自動車

 大気汚染を悪化させる最大の原因となっているのがガソリンなどの燃料を燃費する自動車で、サンパウロ市では市民が呼吸する空気の汚染物質の90%は700万台にもなる乗用車やトラック、バスやバイクの排気ガスから来ている。
 夜間から早朝にかけて喘鳴、呼吸困難が起こり、重症例ではチアノーゼや意識喪失などが現れる気管支喘息や痰を伴う咳が続く慢性気管支炎、息切れや労作時の呼吸困難を伴う肺気腫などといった呼吸障害を引き起こしやすくなる。
 それらを引き起こす原因となる主な汚染物質として硫黄酸化物、窒素酸化物、一酸化炭素、浮遊粒子状物質などが挙げられる。
 硫黄酸化物(SOx)は石炭や石油の燃焼によって発生し、水溶性が大きいので、吸収すると大部分は上気道で吸収され、鼻粘膜、喉頭、気管支を刺激し、慢性気管支炎や気管支喘息の原因になる。
 窒素酸化物(NOx)は石炭の媒煙や自動車の排ガス中に存在する化学物質で、大気中ではすぐに酸化してNO2になる。NO2は水溶性が小さく容易に肺胞まで到達し、そこで亜硝酸や硝酸になり、慢性気管支炎や肺気腫の原因になる。
 一酸化炭素(CO)は自動車の排ガスやたばこの煙に含まれ、血液中でヘモグロビンと結合し、酸素の運搬障害を生じ、脳の酸素不足(頭痛や物忘れなど)を引き起こす。
 浮遊粒子状物質(SPM)とは粉塵の一種で、自動車の排ガスや工場から排出される煙のなかに含まれる。粉塵のなかで10マイクロメートル以下の粉塵をSPMと呼び、吸入すると慢性気管支炎や気管支喘息だけでなく、塵肺症や肺がんの原因にもなる。

呼吸器患者が多い理由

 サンパウロ市のよどんで乾いた空気は大気汚染が市民に与える影響を大きくしている。鼻毛は汚染が体内に入らないようにしているが、非常に細かいほこりなどは空気が乾いていると毛に止められることなく肺に溜まることになり、サンパウロ市内に住む人の罹患を容易にしている。
 サンパウロ総合大学(USP)教授で医者でもあるパウロ・サルジヴァ氏は「肺に溜まった汚染物質の影響で肺は能力の低下をみせる。ほとんどの人々には意味しないほどの低下だが、既に呼吸器官に問題を抱える人や喫煙者の場合、能力の低下は何倍にもなる」と述べ、なぜ大都市で慢性気管支炎やぜんそく、肺気腫や肺癌といった病気で亡くなる人が多いのかを説明している。

タバコ2本分の汚染吸う

 『ボン・ジア・サンパウロ』の特集では、サンパウロ市の空気を毎日呼吸した場合、空気中に含まれる汚染物質によって1日あたり2本のタバコを吸うのに匹敵すると番組の大気汚染専門家は述べた。
 同専門家は「もし、サンパウロが出す排気ガスの量を30%少なくしたら、気管支や心臓疾患で亡くなる人の数が1日あたり5人減る。さらに、市民の寿命が半年延び、心筋梗塞になる確率が5%、肺がんになる確率が6%減少する」とまで述べている。
 また、空気中の汚染物質は血管内の圧力を上げる働きもみせ、健康省によると、1100万人の市民のうち26・6%は高血圧だという。

冬にさらに増す大気汚染

 サンパウロ市の大気汚染は冬になるとさらに酷くなる。なぜなら6、7、8月は雨が降る日が少なく空気が乾くためだ。
 10年8月には気象観測所(Inmet)が観測を始めた1943年以来最低の湿度が記録されている。湿度は極端に下がり、世界保健機関(WHO)の水準60%を大きく下回る12%まで達した。同年、サンパウロ市は11日間乾燥注意報がだされ、3日間警告状態となった。
 市内南部の救急救命室では空気が乾燥、汚染した日には患者の数が30%増えるという。

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