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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年9月20日付け

 市民運動から叩き上げた首相は「脱原発」を唱えて物笑いになったりもしたが、もっと地道な農業の見直しにも目を向けるべきだった。食糧自給率が40%や耕作放置も増える一方であり、日本の農業は危機を絵にしたようなものだ。戦後の農地改革で約200万ヘクタール(町歩)の農地が小作人に無料に近い価格で払い下げられ自作農が541万戸になった▼この革命的な措置は、戦後復興の礎となったが、農地が約1〜2ヘクタールの零細農家では、もう国際的には立ち行かない。2ヘクタールを稲作しても230万円ほどの所得しかなく、これから肥料代などを差し引けば、もう健全経営とは申しかねる。保有農地も米国の99分の1、豪州の2000分の1。欧州の9分の1と眞に情けない▼農業就業人口も今や335万人、しかも65歳超の高齢者が200万人近いとなっては、もう絶望するしかない。農業の生産高もGDPの1%にしか過ぎないと耳にすれば「もう駄目だな」と覚悟せざるをえない。あのコンニャクにしても、輸入品には1700%、コメにも想像を絶する高関税なのである▼農家保護の名のもとに行われる政策ながら、もうこんな姑息な手法では先行きは暗い。ここは農水大臣・鹿野道彦氏の提唱する「農地賃貸への助成金」の実施など農業規模の拡大などに取り組むしかあるまい。もっと抜本的には農家一戸に農地30ヘクタールを配するの提言にも政界と財界が真剣に討議する勇気が欲しい。世界の農業と伍してゆくのにはこうした構想の実現に尽瘁するのこそが、政治家本来の使命であり仕事なはずなのだから。(遯)

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