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民族の苦悩第2部開始=酒井繁一さんの遺作

ニッケイ新聞 2011年9月21日付け

 酒井繁一著の『民族の苦悩』第2部「パルメイラ植民地」が本面の小説欄で開始される。酒井さんは移住前に、宮崎県を代表する民謡である「稗つき節」の歌詞の補作をしたことでも有名だ。
 1932年に渡伯し、植民地での実体験をもとに血肉の通った移民小説に仕立て上げた。第1部は日本で春秋社から発行され、本紙でも掲載済みだ。今回紹介する第2部は、酒井さんが日本滞在時に春秋社へコピーもとらずに郵送し、作品が行方不明になるという郵便事故にあってしまった曰くつきの作品だ。
 帰伯してから再度書き上げ、人に託してもう一度春秋社に送ったが、それも届かなかった。その後、第3部を完成させるつもりだったが、このような事が重なり、結局書く気力を失い、そのまま逝去したという。
 この第2部は息子の嗣朗(つぐよし)さんが物置を整理していて偶然発見した下書き原稿を編集しなおし、03年に個人出版したもの。07年に亡くなった嗣朗さんの妻、文子さんの許可のもとに転載する。
 第1部では、主人公の宗川(むなかわ)俊一(しゅういち)と妻・由子(よしこ)は、3人の幼子を連れてセントラル耕地から夜逃げを決行し、夜警に見つかり、荷物と一緒に耕地外の原始林の山道に放り出され、真夜中の原始林をとぼとぼと町に向かって歩く場面で終わった。

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