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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年10月27日付け

 1967年のゾーナ・フランカ設置で街は発展した。現在のような建築群はなかった。しかし、対岸の〃文明〃は蜃気楼のように見えたのではないか。イランドゥーバのカカウ・ピレラ港でマナウス行きのバルサを待ちながら考えた。アマゾン日本人入植80周年の取材で訪れた09年のことだ▼1953年から日本人入植が始まったベラ・ヴィスタ移住地。62年の第6陣まで165家族が入ったが、2年以内に8割が脱耕した。不退転の決意でアマゾンに来た人たちの翻意が、過酷な現実を物語る。警察が港で取り締まったため、移民らは夜中に息をひそめて櫂をこぎだした。わずか3キロ先の光に向かって。自由への脱出であるとともに、見通しのないその先は、河の名の通り暗黒だったに違いない▼マナウス市に流れるネグロ川と対岸を繋ぐ橋(Ponte Rio Negro)が24日に落成した。待ち時間を除き、バルサで40分ほどかかっていたが、わずか5分に短縮される。料金所もないという。式には約10万人が詰め掛けたが、同移住地で半世紀以上踏ん張ってきた面々はどんな思いをしているだろうか。「子供や孫が帰ってきやすくなって、賑やかになるね」。目尻を下げた古老らの穏やかな顔を思い出す▼着工は07年。取材時には、すでに土地も高騰していた。ゾーナ・フランカの対象区域になることから、移住地の風景も様変わりしていくことだろう。自然を征服し、経済発展を続けるマナウス。その歴史の陰にひっそりとあった日本人移民の苦闘の歴史を今一度、心に刻んでおきたい。(剛)

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