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群馬県=在日ブラジル人保護者と懇談会=帰伯子弟の適応問題説明=日伯で疎外される子供ら

ニッケイ新聞 2011年10月29日付け

 【群馬県太田市発=池田泰久通信員】日本からブラジルに〃帰国〃した日系ブラジル人の子どもたちの社会適応や就学を支援する活動「カエル・プロジェクト」の担当者が27日、群馬県太田市で、同市内外の教育関係者や外国人保護者らとの懇親会(主催=三井物産、協力=NPO法人国際社会貢献センター『ABIC』、後援=県、市教育委員会)を開いた。同プロジェクトの活動内容とブラジルで暮らし始めた日系子弟の実態について、日本側に理解を深めてもらうのが狙い。一行は11月8日まで、日本各地のブラジル人集住都市を訪れ、懇親会を開く。

 このプロジェクトを主宰する心理科医、中川郷子さん(サンパウロ市在住)が、子どもたちのポルトガル語能力の不足に伴う学力の低さや、文化の違いなどによる心の葛藤を中心に話した。
 中川さんは、「多くの日系の子どもは日本生まれ。母国に帰国するといっても、それは違う。その意味で、彼らは移民。日本でもブラジルでもガイジンと感じて、自分の居場所がない不安感に悩んでいる」と指摘。
 ポ語を話せるといっても、多くの子どもたちが家庭での日常会話の範囲内の表現しか分からず、ブラジルの教育課程についていけないことも多い。「日本語なまりのポルトガル語を話していじめられたり、場違い感、無関心、無感動、自己不信に陥ったりする子どもが目立つ。それが日本はもっと良かったという、日本の理想化につながっている」。
 親の意識の程度も話題に上った。ブラジルに戻っても就職先が決まらず、子どもを家に置いたまま留守にする親も少なくないという。ブラジルは危険という過度の緊張感から、学校と自宅の往復だけになって孤独感にさいなまれる子どもも多い。一方で、感覚を共有できる、日本で生活経験のある子ども同士の助け合いも見られるようになったという。
 ブラジルの学校に転入する際の親へのアドバイスとして、①子どもに基本的なポ語の知識を身に付けさせること、②文化の違いについてよく言い聞かせること、③転入時に必要な書類をすべて用意すること、④親も精神的、経済的な準備をすること—などを挙げた。
 特に転入については、日本で通学経験のあるすべての学校の通学証明書(卒業証書)、教育課程証明書、在学証明書などが求められる。この書類は、すべてポ語に翻訳し、日本の外務省や在京ブラジル領事館の公証が必要だが、「ほとんどの親はそこまで知らないのが現状」。書類の不備から学校への転入を断られるケースもあるという。
 サンパウロ州、サンパウロ市教育局が州内の公立学校を対象に行ったアンケート調査(約5500校のうち、318校から回答あり)によると、08年末現在で、606人の帰国子弟の存在が分かったという。ただ、調査にもれた学校も多いことから、実数は相当数にのぼると考えられる。
 国内全体では、08年末の経済危機から現在までに、日本からブラジルに移り住んだとみられる在日ブラジル人が総数で約10万人にのぼることから、その約20%を就学対象の小中高生と仮定した場合、こうした日系子弟は2万人前後いるとみられる。
 このプロジェクトは、サンパウロ州教育省とNPO法人「教育文化連帯学会」(ISEC)が進める。ブラジル日本移民百周年記念事業の一環として、ブラジル三井物産が創設した基金の支援をもとに、08年6月にスタートした。
 中川さんは「ブラジルは広く、支援の手が地方部まで行き届かないのが現状だが、少しでも多くの子どもたちが、この国でやっていこうと思えるように、これからも活動を続けたい」と力を込めた。中川さんと協働する元JICA研修生の沢口グラウシアさん(サンパウロ・カトリック大学院生)も話した。
 一行の今後の予定は、静岡県浜松市30日(ポ語)・31日(日語)、愛知県豊橋市=11月1日(ポ語)・2日(日語)、滋賀県長浜市=3日(日・ポ語)、同県甲賀市=4日(日・ポ語)、愛知県名古屋市=5日(日語)、三重県津市=6日(日・ポ語)、7日(日語)、石川県小松市=8日(日・ポ語)。

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