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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年12月8日付け

 「移民の経験もなく、その時代を知らないのによく書きますね」と言われ、褒められているのか嫌味なのか分からず、苦笑いで頭を掻くことがしばしばある。もちろん取材の証言を支えるのは資料なわけで、この充実さには助けられる。先日も編集部の書棚の整理をしながら、色んな記念誌があるものだ—と感心した▼そんななかでもよく引くのではないだろうか。失礼ながら〃脇息〃代わりといっていいほど、手の届くところに置いているのが「ブラジル日本移民・日系社会史年表」(サンパウロ人文科学研究所編)である。笠戸丸以前の日伯交流史の記述もあり、重宝している。いかんせん96年発行だけに前年までに留まるのが玉に瑕だった▼このほど人文研は96〜10年までの増補版を完成させた。15年分ながら、本編と同様の厚みがある。編集にあたったのは神田大民・本紙元デスク。08年の百周年まで現場にいただけに、記事作りには痒いところに手が届く綿密ぶりだ。コロニアを支えてきた物故者や歴史を残す刊行物の発行も各年で拾い上げてくれたのも有難い▼「作業を通じて日系人意識がより希薄になっているのでないか」と指摘する神田氏には、編集雑感を寄せてもらった。本紙「新年特別号」で掲載準備を進めている。ご一読頂きたい。増補版の充実ぶりを見ると、二つ目の脇息である「日本ブラジル交流人名事典」(パウリスタ新聞社編)の改訂版もお願いしたくなってくる。これも編まれたのは96年。それはさておき、今年1年の大仕事。人文研の関係者、神田氏はじめ編集にあたったスタッフのみなさまにお疲れさま、と申し上げたい。(剛)

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