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JICA=新所長に室澤智史氏着任=聖支所の縮小続く見通し

ニッケイ新聞 2011年12月13日付け

 「財政状態は厳しい」。JICA(国際協力機構)ブラジル事務所に新所長の室澤智史氏(54、京都)が先月21日に着任し、挨拶のために来社してそう語った。
 震災の影響もあって本部の予算が削られており、それに伴って日系社会支援に割ける金額も縮小しているという。「サンパウロ事務所」だった拠点は、現在「支所」だ。かつては日本からの「所長」が常駐していたが、「支所長」となり、ここ数年はブラジル事務所長が兼任する状態となっており、「もう日本から支所長が来る事はないでしょう」という。
 「サンパウロ支所すらなくなるとの噂があるが」と質問すると、「今のところ無くなるという見通しはない」としつつも「縮小こそすれ拡大することはない」とした。
 国外の独立行政法人は一律にコスト削減を求められており、ジェトロなど他団体と一つのビルに入って、会議室を融通しあうなどコンパクト化、効率化を本部から要請されているという。
 JICA今年度予算は円借款を除き、140カ国に約1800億円で、ブラジルには約10億円が振り分けられている。 「かつては南米の予算の方が大きかったが、現在ではより発展の遅れたアフリカの支援が優先となっている」とし、アフリカへの資金配分率は03年に南米を超えた。
 移住者支援業務が主だった時代、最盛期にはブラジル内だけで8カ所もの拠点があったが、現在はブラジリアとサンパウロ市のみ。日系社会支援は「高齢者福祉」と「継承日本語教育」が2本柱となった。
 今後最も重点を置く事業として日伯によるモザンビークでの農地開発協力を挙げる。「既に日伯からの技術者派遣は行っている。今後はブラジルの民間投資を呼びかけ、穀物メジャーも巻き込んで拡大を目指したい」との抱負を述べた。
 「W杯が開催される14年までは居たいですね」と笑顔で話す室澤さんは、前任地のメキシコ事務所から直接、転勤した。ブラジル赴任は87〜91年にサンパウロ、ブラジリアで勤務して以来2回目となる。

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