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人文研=鈴木氏ら引退で所長不在に=「新しい人文研に期待」=新理事に大原毅氏ら5人

ニッケイ新聞 2012年3月30日付け

 サンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長)の「2012年度通常総会」が21日午後に開かれ、理事や関係者ら約20人が出席した。今期で鈴木正威、古庄雄二郎、辻哲三、田中慎二各氏が理事を退任することを受け、2012年度以降の理事会にはこれまで人文研に参画した経験がない新たな理事、監査役として6人がメンバーに加わった。専任理事(所長)は不在。引退する4人を代表して挨拶した鈴木所長は「できるだけ努力を傾けてきた。今後は一会員として協力したい」とのべ「新生理事会が新しい人文研を作るのに貢献してくれるのでは」と期待を寄せた。

 2011年度に行った事業として鈴木正威所長は『日本移民・日系社会史年表』増補版の編集と刊行、奨学生制度、シンポジウム「人文研を考える」の実施、資・史料の分類・整理などを挙げ、「予定通り滞りなく行われた」と報告した。
 シンポジウムの結果、鈴木所長は「方向性が見えた。それを事業に反映していくことが必要」とし、具体的には「従来の研究調査分野に加え、日本文化の研究、調査、紹介、ウェブサイトの拡充等の実施が必要。財源確保のためOSCIP(公共利益市民組織)または財団法人化を目指す」などの意見が集約されたという。
 会計報告では昨年度の収支21万3329・20レ、来年度の収支17万4600レが予算案として承認され、それに伴い古庄第一会計理事は「明確な事業計画や指針がなければ財源を保つのは困難」と懸念を示し、「篤志家の世代交代も今後進む。寄付を既得権益と考えないほうが良い」との見解をのべた。
 来年の事業計画として本山理事長は、人文研内外の約15人で構成する研究所の将来を検討する『特別委員会』を設置する案を発表し、「活動分野の拡大、組織変更、プロジェクトの立案と助成金獲得のための方策」などを検討するとした。
 また「良い史資料があるのに有用に使いこなせる研究者がいない」との課題に対し、「主に日本からの研究者誘致、代表的な資料のポ語翻訳」などと案を発表し、その他出版活動や日本の小説のポ語翻訳、ブラジルの日系社会の実態調査、日本や日系ブラジル研究に関心を持つ人を集めるソーシャルネットワークの構築などを挙げた。
 全体の管理と特別委員会を担当する第一常任理事に就任した弁護士の大原毅氏(76、二世)は取材に対し「重役を任され戸惑っている」としながらも「事業計画では新しい方向性が見えている。積極的に事業を推進していきたい」と抱負をのべた。
 「大学の日本語学科の学生や日本史や移民史に興味を持つブラジル人に人文研に来てもらい、連携をとって共同研究もできるのでは」などとアイデアを話した。
 企業関係者としては初の理事会入りとなる西岡信之氏(ブラジル三菱重工業社長)。鈴木氏は「昨年の総会やシンポジウムにも出てもらい、活動熱心。企業経営の観点からのアイデアを期待している」と話した。
 顧問=清谷益次、脇坂勝則、宮尾進。【理事会】(任期2年)理事長=本山省三、副理事長=菊地保夫、常任理事=大原毅(第1、新)、細川多美子(第2)、会計理事=古杉征己(第1)、高山儀子(第2)、理事=栗原猛(日本部長)、押切フラヴィオ(法務、新)、西岡信之(進出企業関係、新)、松村照明(新)、小林真登(新)。【監査役】(任期1年)正=久保ルシオ(新)、森脇礼之、丹羽義和、副=トッパン印刷、山本商会、フォノマギ書店。

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