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「どの句にも主のありて虚子忌かな」=第20回、80人が参加=初参加 柳原貞子さんが1位に

ニッケイ新聞 2012年4月24日付け

 『第20回リベロンピーレス全伯虚子忌俳句大会』(クロヴィス・ボルピ大会委員長=市長)が21日、リベロンピーレス日伯文化協会館で開催された。同市役所、同文協俳句会共催。節目を迎えた今大会には、あいにくの雨天にも関わらず80人が参加し、句会を楽しんだ。

 小雨が降りしきる中、午前7時のリベルダージ駅は多くの参加者で賑わった。今回が5回目の参加という馬場照子さん(76、東京)は「たくさんの人が参加するので、入賞するのは難しいが、頑張りたい」と意気込みを語った。
 参加者一行を乗せたバスは8時半に同市庁舎に到着。虚子の句が刻まれた碑前で行われた献花式では、村木アントニオ大会副委員長から「みなさんとこの場でまたお会いできて嬉しい。今日は楽しみましょう」とのあいさつの後、小林誠さん(69、和歌山)の孫娘であるガブリエラ百合ちゃん(6、三世)が着物姿で献花した。
 開会式では、大会実行委員長の澤田エベッテさん、村木さん、昨年までの大会実行委員長で、7月に亡くなった中野秀敏さんの弟である好雄さんらの挨拶の後、先亡者、虚子、秀敏さんに向け一分間の黙とうが捧げられた。
 今年の兼題は「虚子忌」「さわやか」「ごぼう」「虫」「草の花」。特別選者は小斎棹子、野村いさを、杉本絃一、広田ゆき、樋口玄海児、富重久子、星野瞳の7氏が務めた。
 投句されたものを参加者全員で回し読み、それぞれが気に入った五句を選ぶ「互選」は、予定時刻の正午に終わらないほど熱心に取り組まれた。
 昼休みには、同会婦人部手作りの弁当が配布され、60年続く同市の句会の様子をまとめた映像が流される中、昼食を楽しんだ。
 午後からあった選句発表で披講士が選句を読み上げると、投句者は笑顔で挙手し、自らの俳号を名乗り上げた。順位は互選と特別選者選の合計得点でつけられ、1位〜6位までにはトロフィーが、7位〜10位には記念品が贈られた。
 初参加で1位に輝いた柳原貞子さん(76、大分)は「友人に誘われ参加した。雨が降っていたので行こうか迷ったが、来て良かった」とトロフィーを手に笑顔で話した。特別選者が選んだ特選句は次の通り。
 小斎棹子選「どの句にも主のありて虚子忌かな」(浅海喜世子)、野村いさを選「残る虫われにつれなき人も逝き」(小斎棹子)、杉本絃一選「大虚子忌守り継ぐリべロン市の偉業」(菊地信子)、広田ゆき選「椿寿忌や句碑守る園に和の一字」(山本紀未)、樋口玄海児選「虚子の忌や根付かんとするポ語のホ句」(平林さつき)、富重久子選「千切れたる茎葉のぬめるごぼう引き」(村上史郎)、星野瞳選「青空に一気に抜きしごぼうかな」(久保一光)。(敬称略)


 〃ナポレオン〃を偲ぶ声も

 昨年7月に肺炎で亡くなった大会の創始者、中野〃ナポレオン〃秀敏元大会実行委員長(二世、享年76)の遺影に見守られながら、80人の参加者は「俳句の日」を満喫した。
 互選によって選ばれた句には、秀敏さんの死を悼むものが目立ち、不在を残念がる声も多かった。
 妻・睦子さんは「あの人は最後の最後までやりきってから逝ったんですよ」と語る通り、亡くなる3カ月前に開催された昨年の大会でも、早朝5時から参加者の送迎に向かうなど、精力的な取組みを見せていたという。
 市議会議員として会館の建設に尽力、俳句が趣味だった両親のために、当時不定期・単発で行われていた俳句大会を『虚子忌』に一本化し、市の行事とした。20年続く大会の礎を築き、発展させてきた功績は大きい。
 初めて立候補した市議会議員選で「ナポレオン」と書かれたために無効となった票があまりに多く、落選したという逸話も、その人望と人柄を表している。

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