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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年4月25日付け

 日本の人たちが新しい暮しをと東南アジアへと向かっているそうだ。老いも若きもが安楽な日々を求め、祖国・ニッポンを離れていくと云うのは、いささか物悲しい。子どもにしっかりとした英語教育をするために是非とも移住したいと生真面目に宣う「教育ママ」もいらっしゃるとかだから、これはもう驚愕するしかない▼日本の石油輸入の命綱であるマラッカ海峡に接するマレーシアが超人気だし、南部のジュホールバルには「リトル・ジャパン」の整備が進んでいる。それも温泉が付いた日本人専用300戸のコンドミニアムが完売しているから—ちょっとやそっとの流行と見るのは誤りかもしれない。そこには、当然ながら—日本の食料品店や居酒屋もあるし、医療機関も入館するのだから仰天である▼この国の首相だったリークワンユー氏の「ルック・イースト政策」は有名だが、あの戦争のときは、日本がシンガポールを占領し「昭南島」と呼んだし、江戸時代から維新や昭和にも貧しく若い女たちが「からゆきさん」として懸命に働いたのは山崎朋子の「サンダカン八番娼館」に詳しい。恐らく—海に命を張った男らとの接触が多かったろうが、その国がマレーシアなのである▼戦後にも日本の企業、取り分け建築業界の進出が激しく、土木や建築を専攻した友人が3〜4人もクアラルンプールに赴任し現場で活躍したのが日本との関係はとても友好的で親しい。そうした国への「移住」は大いに薦めたいけれども、どうも我々のような斧一丁で原始林に挑む「移民」とは異なるお金持ちの「お遊び」のような印象が強い。(遯)

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