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日本びいきのカポエリスタ=メストレ・ブラジリア=北東伯文化伝えて40年

ニッケイ新聞 2012年6月7日付け

 サンパウロ市在住のカポエイラの名人〃メストレ・ブラジリア〃ことアントニオ・カルドーゾ・アンドラーデさん(70、以下メストレ、「師範」の意)は、1970年代に日本で初めてカポエイラショーを行い、北東部の文化を紹介した一人だという。以降、訪日を重ね、ショーや指導での普及に務めるうち、大の日本ファンに。2日午後、サンパウロ市ピニェイロス区で古希と著書出版を祝ったフェスタには、師範仲間のほか、日本人を含む生徒ら約150人が集まった。

 「彼は日本の魂を持っている。バイーア文化をこよなく愛しているけど、食事や精神は日本のものに魅了されているみたい」と話すのは妻のアネッテさん(52)。
 フェイジョアーダ、炭酸飲料は口にせず、白いご飯と緑茶を好む。日本食が大好きで、醤油など日本の調味料を使った料理が多いという。ナタルは祝わず元旦にお寺に行き、お雑煮を食べるのが恒例という筋金入り。仏教徒でもある。
 バイーア州アラゴイーニャス生まれ。1961年にカポエイラを始め、指導歴は45年を数える。初の訪日は72年。サンバショーの興行をやるグループを探していた日本の業者の誘いだった。山口県のホテルで行ったサンバとカポエイラのショーを皮切りに、1年滞在した。
 「その頃、カポエイラはほとんど知られていなかった。自分がやったのが初めてだったと思う」と当時を振り返る。
 以降、複数にわたって訪日、98年からは指導も始めた。大阪の路上で実演したこともある。
 メストレの指導を受けて1年、カポエイラ歴は9年の上岡弥生さん(36、高知)は「メストレのカポエイラは無理をさせないので入りやすい」と太鼓判を押し、尊敬の念を隠さない。
 「国外に興行に出かけるカポエリスタは数多いが、遠いため日本には行きたがらない人が多い。メストレのような人は珍しい」と続ける。
 妻のアネッテさんによれば、米国や欧州、南米の他国にも足を運ぶが、日本に行くことが最も多いという。
 サンパウロ市でも駐在員やその家族を中心にカポエイラを習う人が多い。上岡さんが教える三和学院の教室(生徒22人)にも足を運ぶ。
 昨年12月から「ブラジルでしかできないことを」と通い始めた青木綾子さん(33、群馬)は、「動くだけのイメージだったが楽器も教えてもらえるので楽しい」と笑顔を見せる。
 フェスタでは、カポエイラのホーダ(円陣の中心で楽器の演奏とともに対戦すること)から始まりサンバ、マクレレ(棒を使った格闘技のようなダンス)の熱気にあふれたショーが繰り広げられた。
 真っ白な上下のスーツに身を包み、ブラジル人に限らずフランス、アメリカなど多くの外国人門下生に囲まれたメストレ。カポエイラだけでなく歌も披露し、終始幸せそうな笑顔を見せていた。

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