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ピラール=「まりまり」訪問を機に交流=日語、現地校が芝居稽古=ともに公演、拍手喝さい

ニッケイ新聞 2012年8月24日付け

 コロニアの日語学校が地域社会へ—。「日本ブラジルお芝居出前プロジェクト」で、現在各地で公演している俳優集団まりまりの4人と、プロジェクトを企画監修する静岡文化芸術大学の池上重弘教授が13日から、ピラール・ド・スール文協の招待で約1週間同地に滞在し、同文協日語学校、地元の学校に通うブラジル人の子供達と芝居の指導を通じて交流を行った。18日に同市の広場で子供達も出演した野外公演は大好評を博し、まりまりは同市の高齢者施設でも公演した。日語学校で長年教師を務める渡辺久洋さん(38、愛知)は「日語学校と地元の学校の生徒が、何かを一緒にやるのは初めてでは。学校間の交流やコロニアの活動への理解が深まり、地域社会への貢献にもなったはず」と意義を強調した。

 「ピラールには文化活動がない。カイカンがやっている活動に市民は皆関心があるが、全然知らなかった。もっとこういうことがあってもいい」。野外公演を観た同市在住のマウロ・ゴンサルヴェスさん(55)はそう頷きながら語り、公演については「面白くて引き込まれた。次は何が出てくるかとわくわくした」と大満足していた。
 まりまりメンバーと池上教授の同地訪問は2度目。昨年は日語学校の生徒の前で公演を行うのみだったが、今回は生徒達が元となる物語を選び、日ポ両語で台詞や動きを考えたものに、まりまりが稽古をつけた。
 約半年前から計画を立ててきた渡辺さんは「日本語の勉強になるし、子供達には心を動かすような色々な体験をしてもらいたい」と、一行を招いた理由を語る。一行が滞在中は授業を停止し、交流にあてたのも「それだけのものを得られると思ったから」だ。
 同日語学校と同市の私立学校「コレージオ・オブジェチーボ」は数年前から、イベント時に互いの生徒が訪問しあうなどの交流を行っていた。オブジェチーボ校は、通常科目以外に情操教育にも力を入れ、教師達も教育熱心だ。
 今回、渡辺さんの呼びかけで同校の生徒も交流に参加することが決まり、全生徒がまりまりのワークショップを受けるためバスで日語学校を訪れるなど、学校を挙げた取り組みとなった。
 17日、日語学校に児童を引率してきた同校教諭のタチアーナ・デ・カンポスさん(32)は「(日語学校の生徒との交流は)素晴らしいこと。父兄も喜んでいて、その意義を理解しています」と熱を込める。
 2つのグループに分かれた日語学校の6年生と上級生の生徒達は『街路の石』『シンデレラ』の2本をそれぞれ選び、音響照明、舞台装置などはなしで、効果音も口で言うなどの工夫を凝らした。味のある演技を披露していた上級生の安藤あきらくん(15、三世)は「最初は緊張したけど、だんだん楽しくなってきた」と微笑んだ。
 18日午前10時過ぎに始まった野外公演では、生徒の保護者や教師、地元市民など200人以上が集まり、まりまりメンバーと子供達が交互に演目を発表した。
 最後はまりまりの「大きなカブ」で観客が参加してカブを抜き、大盛り上がりで公演は終了。演技を見守る観客の目は終始真剣で温かく、演目が終わるごとに、大きな笑い声と拍手が広場に響いた。

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