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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年10月31日付け

 バスで帰宅中、ナタール(クリスマス)の飾りを並べた季節限定の仮設店舗がもう並び始めたのに気づいた。そういえば、大通りから見たビルにも電飾やモールが飾られていたなと思った矢先、サンパウロ市のショッピングセンターでナタールの飾り付け本格化との記事も出た▼もっとも、9月の終りにはパネトーネが並び始める国なのだから、いまさら驚く事ではない。シリアでもナタールには和平が完全実現していればよいがと考える一方、ブラジルが様々な国から来た民族から成る人種の坩堝で、各々の文化や伝統は、混交を許しながらも簡単に消滅しない事を再度実感する▼先に挙げたパネトーネは、ピザやマカロン同様にイタリアの食ベ物。パパイ・ノエル(サンタクロース)が北半球と同じ長袖で長ズボンに帽子という、真夏の南米にしては少々暑苦しい衣装をし、雪まがいの綿をクリスマスツリーに飾ったりするのは、北欧文化への敬意の表れか、それとも商業主義がはびこる証拠か▼南伯やサンパウロ市などで10月に開催されるオクトーバーフェストはドイツの伝統行事だし、聖週間はバカリャウ料理を食べ、日本人の祝い事にはシュラスコと共に寿司や煮しめも並ぶ▼10月31日のハロウィーンや11月2日のズンビーウオークも定着してきたブラジルだが、日系社会ではレジストロの灯篭流しが定番行事だ。当地のお盆「フィナードス」に日本の灯篭流しが一体化した行事だ。日本では原爆記念日の8月5日夜、サンパウロ市イビラプエラ公園で行われる灯篭流しは、日本のカレンダーにブラジルのイベントを重ねた例だ。行事一つにも、この国が人種の坩堝であることが実感される。(み)

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