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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年12月5日付け

 TVクルトゥーラ局が日曜夜に放送する番組「レジオン・エストランジェイラ(外人地帯)」では毎回、欧米マスコミの在聖特派員が出演し、ブラジル経済や政局を外側の視点から論じる。この日曜は、大統領府サンパウロ市事務所の女性所長が人事権や影響力を駆使して私腹をこやしていたポルト・セグーロ(以下、安全港)事件が焦点となり、「メンサロンで一掃されたと思っていたが、まだまだ政界の汚職の闇は深いという印象が強まった」との厳しいコメントも出た▼さらに「今までのファッシーナ(ジウマ大統領による汚職官僚や大臣の首切り)は、誰かの密告によってベージャ誌などの報道から始まっていたが、今回は連警による摘発であり、より深刻だ。連警から始まったものは長引くし、時に政権に致命傷を与える」との言葉には、さすが特派員と感服した▼安全港事件がマスコミを賑わし始めたのは11月で、選挙が終わった直後からだ。この報道がもし選挙前から始まっていたら、女性所長を指名したルーラ前大統領はもちろん、PT候補は大打撃を受けていただろう。連警の捜査開始は選挙のはるか以前であり、この時期に報道が始まったことも不思議だと思い当たった▼それにしても「外人地帯」で日本人特派員が出たのを見たことがない。残念だ。外人特派員のポ語はたどたどしいが、それなりに長期滞在している話振りで、ブラジル政治、経済を議論する力があるのは立派だ。3年前後で入れ替わる日本式では難しいのか。日本のマスコミもポ語に堪能な特派員を育て、アジアからの視点で見た世界情勢分析を披露し、欧米マスコミと喧喧諤諤の議論を展開して欲しい。(深)

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