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事業の実施に向けて=サンパウロ日伯援護協会会長 菊地義治

ニッケイ新聞 2013年1月1日付け

 みなさま、新年明けましておめでとうございます。2013年(巳年)の年頭にあたり、サンパウロ日伯援護協会(援協)を代表して一言、新年のご挨拶を申し上げます。昨年は世界的規模で政治、経済が大きく揺れ動いた激動の年でありました。
 国際政治面ではイスラム圏を中心に、いくつかの国で独裁政権が倒れ、民主主義の台頭が見られました。アメリカ、フランス、ロシアで大統領選挙が行なわれ、アメリカではオバマ大統領が再選、フランスではオランド大統領(社会党)が誕生、ロシアではプーチン首相が大統領に復帰、中国では習近平体制が発足しました。
 国際経済面ではギリシャ財政危機が発端となり、今やEU(欧州連合)加盟国全体が長期化する経済低迷に苦悩しております。一方、高度経済成長路線をひた走ってきた中国経済に翳りが見え始め、アメリカ経済もリーマンショック以来の不況から、未だ脱却できておりません。
 翻って、日本に目を転じて見れば政治面では大きな期待を背負って誕生した民主党政権が瓦解し、衆議院・総選挙が行なわれ、その結果、今や二大政党時代から、小政党乱立の時代に突入した感があります。
 経済面では大震災の後遺症は未だ癒えておらず、完全復興には程遠く、一方で長期化するデフレ不況に日本を代表する大手家電・コンピューターメーカー数社が大幅な赤字決算を強いられるなど、日本経済は未だ回復途上にあります。
 さて、昨年は援協にとっても大きな決断を迫られる重要な年でありました。援協にとって最も大切な社会福祉法人としての認可更新の年でありました。そのため、昨年6月、サンミゲルアルカンジョ市でSUS病院の建設に着工(開院は今年の3月を予定)、同じく、昨年6月にはグアルーリョス市との間で高齢者専用のSUS中・長期療養型病院(仮称「グアルーリョス神内病院」)の建設(建設着工は今年後半以降)に関する覚書を締結いたしました。
 いずれも援協にとって大きな投資を伴う事業ですが、援協がブラジル国で存続・発展していくためには必要不可欠な事業であり、援協の総意の下、援協の将来のための先行布石として事業推進を決断いたしました。
 特に「グアルーリョス神内病院」の建設プロジェクトに就きましてはこれまでも援協に対し、多大なる資金援助をいただいております日本国際協力財団の神内良一理事長様からの資金援助を仰ぎながら、推進してまいります。
 ここブラジル社会も急速に高齢化が進み、日系人高齢者の救済は言うまでもなく、ブラジルの高齢者全体への支援が大きな社会問題となっており、この意味でも「グアルーリョス神内病院」の建設プロジェクトは時宜を得た大切な事業と認識しております。
 さらに今年は自閉症児療育事業の拡大等、日系社会のみならず、ブラジル社会が必要としている喫緊の重要なプロジェクトにも具体的に着手してまいります。
 世界的な景気鈍化の影響を受けてブラジル経済も嘗てのような勢いは失いましたが、2014年の世界サッカー大会、2016年の夏季オリンピックの開催を控え、日々、躍進を続けるここブラジル国で如何にブラジル社会と融和しながら存続・発展していくのか、これは日系社会に突き付けられた永遠のテーマであります。
 援協は今後とも、創立の理念であります「社会的弱者の救済援護」の精神を忘れることなく、医療と介護福祉分野に於いて着実に実践し、名実ともに日系社会の中核団体として日系社会のみならず、ブラジル社会に貢献していく所存であります。
 末筆ながら、みなさまのご多幸とご繁栄を祈念致しまして年頭のご挨拶とさせていただきます。

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