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イビウナ庵便り=中村勉の時事随筆=ブラジルの国歌=1月7日付け

ニッケイ新聞 2013年1月12日付け

 よくブラジルの国歌は、その詞と曲が高い評価を受けていると言われる。しかし、これを歌い通せるブラジル人は少ない。あまりにも長過ぎるのだ。短いことで定評の「君が代」と好対照をなしている。
 実は3番まであると聞くが、知っている人もあまりいないし、歌うのを聴いたこともない。歌われても、精々2番までだ。歌詞は、凝っていて、庶民には意味を把握するのが容易ではない。しかし理解すると「あぁ、好い国歌だなぁー」と言う。サッカーの国際試合などで選手が歌う映像を見るが、大概は口をぱくぱくしているだけのように見える。
 …長年ブラジルにお世話になっていながら、私自身も歌えない。そのことが気になっていた。死ぬまで歌えなかったでは不名誉だ。せめて1番だけでも歌えるようになりたいものだと念じて、2013年初のテーマに選んだ。
 法令No.5700により、01/09/1971(コスタ・エ・シルヴァ大統領)付けで国歌と定められ、38年後の22/09/2009(ルーラ大統領)に学校での週一回の唱歌が義務付けられた。以下は原文(1番のみ):
作詞 Joaquim Osorio Duque Estrada (1870 ? 1927)
作曲 Francisco Manuel da Silva (1795 ? 1865)

Ouviram do Ipiranga as margens placidas / De um povo heroico o brado retimbante, / E o sol da liberdade, em raios fulgidos, / Brilhou no ceu da Patria, nesse instante, / Se o penhor dessa igualdade / Conseguimos conquistar com braco forte / Em teu seio, o liberdade, / Desafia o nosso peito a propia morte! / O Patria amada, / Idolatrada, / Salve! Salve! / Brasil, um raio vivido / De amor e de esperanca a terra desce, / Se em teu formoso ceu, risonho e limpido, / A imagem do Cruzeiro resplandece! / Gigante pela propria natureza, / Es belo, es forte, impavido colosso, / E o teu futuro espelha essa grandeza! / Terra adorada / Entre outras mil, / Es tu, Brasil,/ O Patria amada! / Dos filhos deste solo es mae gentil! / Patria amada, / Brasil!

日本語訳は:
イピランガの岸の静寂を / 破る雄叫び上がれり / その時 自由の光が 祖国の空を照らせり / 強き力に 平等への道開かれ / 胸なる 自由の 熱き願い死も嫌(い)とわじ / 愛する祖国に 永久の栄 / ブラジル 夢多き国 / 愛と希望の光射しこみ / 明るく澄み渡る空に 光る南十字星 / その自然は 雄大なる 強く勇ましき巨人 / 権勢誇る 未来映し / わが祖国 全ての国に勝りて佳し / 母なる大地ぞ わが祖国 ブラジル

—渡邊 智子訳 (2007年8月16日 ニッケイ新聞)他にも邦訳はあるが、この訳詞は曲に合わせて歌える初めてのものだ。訳文から読み取れるように、自由、平等、祖国愛、夢、希望、雄大な自然、未来という言葉で彩られている。単に「天皇陛下万歳!」を唱和する丈の日本の国歌とは異なり、主権在民の思想が、ブラジルの国歌には込められている。

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