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在ベレン総領事館縮小問題=地元日系団体が猛反発=両国政府に嘆願書提出へ=外務副大臣に電話で直訴

ニッケイ新聞 2013年2月21日

 【既報関連】経費削減のため、日本政府関係者から在ベレン総領事館を駐在官事務所にするとの通達があったことから、地元日系社会で猛反発の声が上がっている問題で、反対運動を展開するパラー日系商工会議所の山中正二副会頭は本紙の電話取材に対し、地元日系諸団体の連名で麻生太郎副総理、伯日議員連盟会長、パラー州知事など両国政府関係者等に宛てた嘆願書を出す準備を進めていると明かした。3月に本件に関する国会審議が行われる関係で時間が足りないために署名活動は断念し、政府関係者や有力者筋に直接嘆願書を送る方が効果的だとの判断が下されたようだ。

 嘆願書の準備に加え、山中氏は従兄弟にあたる岩手県議・佐藤弘吉氏の協力を得て、鈴木俊一外務副大臣に直訴したという。山中氏によれば、佐藤県議が同県選出の鈴木副大臣の就任祝賀会で、本件を報じた邦字紙のコピーを手渡した。さらに山中氏は16日、鈴木副大臣と直接電話で約30分話す機会を持った。
 そこで山中氏は「パラー州は、特に移住者やその子弟がブラジル社会に溶け込んで頑張っているところ。事業仕分けで何でも切るのはおかしい。長期的展望に立って両国の国益を考えるべき」と訴え、記事を読んだという鈴木氏は「わかりました。総領事館は閉めず、人員を削減して運営する」と政府の決定通りの返答をしたという。
 嘆願書提出に向け、連携して動いている汎アマゾニア日伯文化協会の堤剛太事務局長によれば、4日にあった説明会後、反対運動の音頭を取り始めたのは会議所の山田フェルナンド会頭だ。
 山田氏は北伯最大のスーパーマーケットチェーン「Y・Yamada」の副社長で、今年から全国スーパーマーケット協会の会長に就任した経済界の大物。駐在官事務所になることで経済的な面での影響が大きいとし、「自分たちだけでなく日本側にもデメリットがある」と主張しているという。
 文協でもトメアスー、マラニョン、アマパー、ピアウイなどに広がる傘下18団体に活動の主旨を説明する手紙を出し、反応を待っている段階だ。
 堤氏は「マナウス総領事館は残るというのが不満の要因の一つ。日系人口は5千人だが、パラー州は3万5千人いる。マナウスに38社ある進出企業を守ろうという発想が透けて見える」とも話し、地元コロニアでは「日本移民が始まった歴史がある地を軽視している」との声が高まっているようだ。
 政府の方針が変わる可能性は—。在ベレン総領事館の大岩玲首席領事にきくと、「総領事館から出張駐在官事務所に変わることはすでに閣議での決定事項」という。
 出張駐在官事務所に変われば在外公館としては格下げになるのではないか、との本紙の問いに、「総領事の名前でできていることも多いが、駐在官事務所になっても領事業務はそのまま継続される。総領事がいなくなるからといって格下げという言葉は使いたくないし、総領事館と出張駐在官事務所とで明確に業務内容が区切られているわけではない」とのべるにとどめた。
 さらに、本省の清水享南米課長が来伯したさい、ともにベレンやトメアスー各地を回って地元の声を改めて聞いたといい、「できるだけ業務範囲は縮小しないまま継続されるよう、外務省内で検討されることを期待している」と付け加えた。
 ただし、「国会で決定がひっくり返るかもとの期待もあるかもしれないが、閣議決定したということは重要なこと。中身を伴った新しいベレンの在外公館としてスタートすることを考えていくべきでは」とも話しており、駐在官事務所への変更が規定路線と考えているようだ。

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