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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年5月8日

 「BRICs」の名付け親ジム・オニール(ゴールドマン・サックス投資会社会長)が4月末の引退会見で「伯国には失望した」と発言し、話題になった。ここから透けるのは、世界的投資銀行ですら伯国の本質を見抜いていないという事実だ。失望すべきは、同社の分析力か▼同標語が広まった01年当時、最もピンと来ていなかったのは当の伯国民だった。膨大な対外債務を抱え、99年にはミナス州のイタマル・フランコ知事(前大統領)が対連邦政府債務モラトリアム宣言を発し、国内の金融危機が深刻化したすぐ後だった。地に落ちていた国際的信用をいかに回復するかというレベルの状況だ▼BRICsと聞いて当地知識人は、高名なユダヤ系作家ステファン・ツヴァイクが『未来の国ブラジル』(41年)を書き、将来有望な「未来の大国」であると欧米に紹介したことを思い出した。同本以来、国民は《永遠の「未来の大国」》だと自嘲するようになった▼92年に民族学者の梅棹忠夫と前山隆静岡大学教授が対談した時も、梅棹は「未来の国なんだけども、その未来にどうしてたどりつけるかが問題なんで、永遠にたどりつけないのかもしれない」と言い、前山は「いくたびにブラジルは変わってますよ。変わってますけれども、救いようのない点も姿を変えたままちゃんとあります(笑)」と応じた。経済専門家より文化人類学者の方がこの国を深く理解している▼「国破れてサンバあり」との国民性はそう変わらない。「Antes tarde do que nunca」(譬え遅れても来ないよりは良い)という当地の格言がある。〃永遠の未来〃でも、いつか来れば良いのだ。(深)

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