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デカセギ=渡航費貸付け利子月10%=返済不可で岐阜の施設へ=「仕事斡旋ない」は本当?=二宮氏「半分は本人の責任」

ニッケイ新聞 2013年6月7日

 渡航費を前借りして訪日した複数のデカセギが、職が得られず生活に困窮し、岐阜県の施設に身を寄せていると先月17日付けで、日本のポ語サイト「インターナショナル・プレス」(IPC)が報じた。同サイトによれば、彼らはサンパウロ市の派遣業者を通じて訪日したことで、「生活は保証された」と信じていたが、期待する就職斡旋が受けられず、無職で渡航費も返済できない。デカセギらは同制度を批判すると共に、連帯保証人となった当地の家族のことを案じている。

 IPCが製作している在日コミュニティ向けのニュース番組「ジャパンテレビ」(以下、JPTV)の依頼で、施設に身を寄せるデカセギの一人の契約書を調べた二宮正人弁護士は、「契約書には『状況によっては職を斡旋できないこともある』と書かれている。本人はそれを承知でリスクを犯して行ったことになる。約束手形に保証人までサインしている以上、借金は返済しないといけない」との見解を述べた。
 CIATE理事長として訪日希望者に向けた講演を長年行ってきた二宮氏は「昔と違って仕事が少ないのは分かりきったこと。気をつけて行きなさいといつも言っている」と苦言を呈する。
 今回のケースに関しても「職業斡旋しなかった業者に道義的責任はあるが、リスクを犯して行った以上、半分は本人の責任」と語る。
 ただし、「利子が高すぎる」とも指摘する。同デカセギが借りた渡航費は36万円程度。この額さえ自力で準備できないブラジル人にとって、借金にかかる金利、月10%は「サラ金地獄に等しい」と評する。契約書の中で最も「おかしい」とするのがこの点で、「ブラジルでも日本でも、裁判で突き崩すことができるでしょう」と話した。
 当地では一般銀行すらシェッキ・エスペシャルを使えば月9%前後の利子がつくが、日本では通常ありえない利率であり、その辺が一つの焦点のようだ。
 一方「職が得られない」のは、斡旋はあったが期待した仕事ではなかったからなのか、斡旋自体がなかったからなのか——。
 同デカセギが利用した南インターナショナル社は20年以上の派遣歴があり、金融危機後のデカセギ激減を乗り切ってきた〃生き残り〃だ。しかし責任者からは「今の所取材に応じるつもりはない」との返事で、詳しい事情は分からなかった。
 南社と同じく20数年の派遣業の古株、ASP社の蛯原忠男さんは「先に投資をしておいて仕事を斡旋せず逃げられるなんて、バカなことをするわけがない。僕の知っている範囲では岐阜での仕事も十分あるはず」との見解を寄せた。
 別の派遣業者も、「昔はどこも渡航費貸付をしていたが、踏み倒しが増えてやらなくなった。今では貸付自体がめずらしい」と説明する。
 蛯原さんは「どんなに前もって説明しても、日本に行くと『期待通りの仕事じゃない』と逃げていく人は一杯いる。客の1〜2割は渡航費目的で、訪日したとたん消えてしまう」のが実情という。「泣き寝入りしたことも何度もあった。南のケースも同じかも」との可能性も指摘した。
 なおASP社での貸付額は渡航費こみで2〜3千米ドルが相場。返済期限はなく、「1700貸したら2千返す」など貸付額にいくらかを上乗せ(この場合は約17%)した額が請求される。訪日後2〜3カ月で支払いが可能になり、通常は4〜5回払いで完済するという。利子が割高なのは、高い貸し倒れ率も背景にあるようだ。

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