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ニッケイ新聞 2013年6月27日

 ブラジルが〃抗議行動のフェスタ・ジュニーナ(6月祭り)〃で揺れる中、22、23日に全国6都市で開催中のコンフェデレーションズ杯グループ予選が終わった。26日はブラジル対ウルグアイ、27日はイタリア対スペインの準決勝になっているが、23日のウルグアイ対タヒチ戦は色々な意味で印象に残った▼ポリネシアにある人口18万人の小国タヒチは、ギリシャで活躍するベテランのマラマ・ヴァイリュア以外は全員アマチュアのチーム。「コンフェデ杯出場自体が勝利。ここにいるだけで幸せ」「スペインの胸を借りられるなんて」と語っていた選手達は、初戦の対ナイジェリア戦で国際試合初の得点を入れたが、ナイジェリアに6点、スペインに10点、ウルグアイに8点を献上して今大会を終えた▼だが、初得点を挙げた選手や監督が嬉しくて泣きそうになる姿や、大量失点しながらも最後まで闘志を持ってプレーする姿はブラジル民の心を揺すぶり、ウルグアイ戦ではパスをつなぐ度に「オーレ!」の声。後半にウルグアイ側のペナルティキックをキーパーのメリエルが止めた時には大歓声が沸き起こった。試合後に選手全員がブラジルの国旗を羽織り「ありがとう! ブラジル」と書いた横断幕を持ってサッカー場を一周する光景も感動を与えた▼アマチュアと思えぬ闘志を見せ、日本とフェアプレイ賞を競った選手達は、教師や運転手、配達人などの職業に戻る。開幕直前まで予想外だったデモ隊と機動隊との激突や株価の下落など、やたらと荒れたコンフェデ杯中の世情において、彼らの存在は実に一服の清涼剤だった。(み)

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