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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年8月2日

 バスの中ほどでアクビをかみ殺してヒマそうに座っているコブラドール(車掌)を見るたびに、〃奴隷の呪い〃の権化だと感じる。現金で払う乗客は少なく、ほぼ必要のない役職だが、労働組合が強いからバス会社は人員削減ができず、バス賃はいつまでも高い▼ブラジルが近代化するための道筋に転がる最大の障害の一つはこの〃奴隷の呪い〃だろう。郵便局も同様で、局員のストが恐いから郵政民営化はありえず、宅急便のような産業は育たない。宅急便がないとネットで物を買っても配達されないから、その手の近代産業も育たない▼この〃呪い〃の原因は奴隷時代に酷使されたという被害者感情ではないか。奴隷開放から125年経っているが、それが広く国民の無意識に刻み込まれているから、過剰に労働者の権利を主張する伝統が生まれた。雇用者を訴え、ストを打つことは、常に〃正しい〃と思われている節がある。治安に責任を持つ警察、インフラの要の空港職員、子供の将来を担う教育者、人命に関わる医者まで平気でストを打つ▼正式な医者になる前のインターン期間として、SUS運営の地方保健施設への勤務を義務付ける法令に反対して、全伯で医者や医学生がストをした。良く考えたら、国民の税金で運営されている公立大学医学部の学生が、一般庶民のために2年ぐらい奉仕して何が問題なのかと逆に不思議だ▼伯字紙で「公立大学法学部卒業生も、弁護士や裁判官になる前にファベーラで法律相談を2年間することを義務付けるべき」との声を読み、なるほどと思った。この国で唯一ストをしないのは、待遇や給与を自分で決められる政治家ぐらいか。(深)

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