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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年10月11日

 「日系ブラジル人」を初めて認識したのは、テレビのなかだった。マルシア、カルロス・トシキ、小野リサ、セルジオ越後—。当時は彼らに思いを馳せることはなかった。しかしブラジルに来てから、移住、日系社会という背景を知り、親近感を抱くようになった▼コラム子が来伯してからは、地元住民との軋轢や在外処罰問題などが報道され、地域によっては、ネガティブなイメージを持たれることも多い。そんななかで全く逆の方向である、リンダ三世などアイドルグループも出てきた。在日ブラジル人から多様な人材がでてきていることを感じさせる▼冒頭に紹介した芸能人たちは日本語の拙さが、見た目との違和感を生み出していた。「異国から来た不思議な人たち」というイメージが時代に合っていたのだろう。マルシアは〃変な日本語〃をウリにしていたほどだ。それが言葉を武器にするお笑いの世界に日系人が出てきた。お笑いコンビ「デニス」の植野行雄さん(32)だ(本紙7面で詳報)▼1歳から日本に住んでいるというから、中身は完全な日本人だろうが、見た目からブラジルをネタにしているという。出演が決まったドラマでは日系ブラジル人の航海士役。取材した記者によれば、大いに張り切った様子で声を弾ませていたとか▼ただ、ブラジルに住んだ経験はなく、ポ語も全く解さない。しかしコンビ名は父親の苗字をつけた。父祖の国に誇りを持つ立派なブラジル日系人だと思う。「夢は日系人のみんなの前で漫才をしたい」との言葉も。凝り固まった日系イメージを覆す意味でも、今後の活躍にコロニアからもエールを送りたい。(剛)

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