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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年11月15日付け

 日本からの三件目の国外犯処罰(代理処罰)がブラジル政府に要請された。今回は昨年末に静岡県焼津市で起きたブラジル人母子三人殺害事件のエジルソン・ネーベス容疑者に対するものだ▼被害者のうち二人は子供であり情状酌量の余地はない。日本国内の裁判なら死刑判決を受けてもおかしくないという。同容疑者が事件後早々に帰伯したのは、当地には死刑もなければ終身刑もないという刑量差をよく分かっていたのだろう▼以前この欄で、日本の小説や映画で描かれるブラジルのイメージには「犯罪者の逃亡先」という先入観念が未だ強いことを嘆いた。八月十九日付けジアリオ・デ・サンパウロ紙によれば、今年だけで国外で犯罪容疑をもたれている外国人約四十人がブラジル内で逮捕されている。逃げている容疑者はその何倍かいるであろうから、そのイメージには残念ながら一理あるようだ▼その一因には刑量差ばかりでなく、人種の混じった当国では誰も目立たないという特殊性があり、特に移民子孫が多いサンパウロ市周辺や、外国人観光客の多いリオや北東伯なども外国人犯罪者が逃げ込みやすい集中地帯だと同紙は報じている▼「移民大国」であることが発展の原動力になり、国内総生産世界十一位にまでなった当国の裏をかく事態だ。外国人がブラジル内で逮捕されたらその国に引き渡される場合があるが、帰伯逃亡したブラジル人は憲法の規定により、外国に引き渡されることはない▼だから国外犯処罰は有効な手段だ。外国人であれブラジル人であれ無処罰ではおかない姿勢が当国のイメージをあげる。今回も警察の素早い対応に期待したい。(深)

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