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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年10月15日

 「天皇は中国やフィリピンに行って謝るべきだ」—。こんな発言が壇上から飛んだ。日教組か極左グループの集まりなら分かるが、これが13日に宮城県人会であった「コチア青年・古希、喜寿、傘寿祝賀会」の席なのだから驚いた。個々人それぞれの考え方があってしかるべきだろう。しかし、それにふさわしい場というものがある。発言の主は、喜寿を迎え壇上で祝福を受けていたパラナ州カストロ在住の香川公宏氏▼戦争責任を取っていないとする天皇批判から、話はあちらこちら、果ては原発にまで飛んだ。これが閉会の辞での発言なのだから恐れ入る。酒席であれば議論の火種にもなるだろうが、場違いも甚だしい。一昔前なら制裁を加えられたに違いない。コチア青年が平均年齢78歳を迎えたことで分かるように、コロニアも老いたものだ▼この御仁、コチア連絡協議会の元会長である。それで閉会の辞を—となったのだろうが、頼んだ方も頼んだ方だ。会場はざわつき、司会が「コチア青年らしい元気な発言で…」とまとめようとするも「らしくない!」と怒号も飛んだ。「変わりもんが多いから、あのくらいは…」と苦笑いが広がった会場で、ブラジル日本会議の小森広理事長が「歴史を勉強しろ」と抗議していたのが印象的だった▼昨年あった『コチア三世研修訪日団』では関係者の肝いりで皇太子殿下との謁見が叶っている。白旗信会長(当時)は「ブラジルの若者でこうした機会はない。貴重な体験」と喜んでいたことをい出した。空気の読めない年寄りの妄言と一笑に付していい話だが、面白かったので書いてみた。(剛)

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