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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年10月23日

 抗議としての破壊活動をする、黒ずくめの若者の覆面集団「ブラック・ブロック」(BB)の姿を6月以来、テレビでよく見るようになった▼BBは90年代に欧米で生まれたアナーキスト(反権力主義者)や反資本主義者の抗議行動だ。アナーキストの旗が黒だから黒ずくめの格好をし、資本主義の代表たる自動車産業、地方政府、大銀行、マクドナルド、マスコミなどを狙って破壊活動をするのが欧米のBBらしい▼専門家の中には「現在では変質し、ブラジル式になった」と分析する者もいる。当地でも最初は欧米に近い動きだったが、最近は一般商店も見境なく破壊する方が目立ち、〃当地式〃になったとの見方だ▼主要TV局や新聞でも「baderneiro」(ならず者)との表現がすっかり定着した。その破壊活動に共感を覚える一般市民はごく少ない。でも「平和的に抗議行進をしても何も変わらない」との政治への無力感を持つ若者が多くいるからこそ、「創造のための破壊」を標榜して暴力行使する過激な若者が後を絶たない▼この動きは、世界から注目が集まるサッカーW杯に向けて激化していく可能性が高い。同時に、選挙前はごね得だとみなが知っているから、来年の大統領選挙を睨んで、各種組合の抗議行動も活発化している▼組合を支持基盤とするPT政権だけに、抗議活動にゆるい対処をしていた部分がある。それを逆手にとって、元々はPT親派だった活動家が分派し、合従連衡を始めたようだ。どこまでこれが先鋭化するのか…。今までブラジルをBRICsと持ち上げてきた国際社会だが、ある日突然、手のひらを返して「しょせんブラジル」となる日が来そうで怖い。(深)

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