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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年11月5日

 先週のレジストロ地方入植百周年式典を取材しながら、その興味深い歴史があまりに正史から除外されていると痛感した。式典で飯星ワルテル連邦下議が「レジストロにはヒロタ副市長、イグアッペも副市長、セッチ・バーラスはタバタ市長。日系の存在感が強い」と強調していたが、不思議なことにレジストロには日系市長が過去一人もいない▼正史では日系政治家の先駆けは田村幸重だと言われている。『ブラジルの日系人』(原田清編著、2010年)には《1948年に日系人が初めての議会政治に参加した。サンパウロ市の市会議員に当選した田村幸重によってである》(59頁)と堂々と書かれている▼でも桂植民地が作られたイグアッペ郡に先達がいた。人文研『年表』には《1937年9月28日、北島弘毅イグアッペ副郡長に郡役所から任命される。日系では初めて》とある▼1900年の北清事変で多数の仏人傷兵の治療をして仏政府から勲章を、日露戦争の活躍で日本政府から勲五等を受けた後に渡伯し、レジストロでは伯人にも分け隔てなく治療して〃リベイラ沿岸の神様〃といわれた北島研三医師の息子だ。戦前に日本の大手雑誌『キング』などに随筆、中南米文学の紹介を執筆していた本格派コロニア文人、北島文子の「夫」でもある▼レジストロに市制が布かれたのは1944年で、大戦中にイグアッペ郡から独立した。市長はいないが日系副市長は6人もいる。日本人が始めた町だからこそ日系でなく、伯人を立てて支える縁の下の力持ち役に徹してきた。その燻し銀的あり方にこそ、最古参移住地ならではの知恵を感じる。(深)

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