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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(83)

ニッケイ新聞 2014年1月23日

『宴会やお祭りが好きな仏様や神様がたくさんおられます。それで、この宴会が開かれたのです。この酔っ払いの方達は、もしかして酒好きの仏さま達の化身かも知れません。お願いです。成仏して、輪廻転生によって、また、人間に生まれ変わって来てください』

《我々も生まれ変わって新しい人生が・・・、始められるのか?》

『そうです。成仏すればです・・・。ですが、・・・、生前の行い次第では、必ずしも人間として生まれ変わってくる保障はありませんが』

《心配には及ばん。この人里離れた密林の奥で悪い事をしようにも無理じゃったわい。ハッ、ハッ、ハ。それで我々は良い奴ばかりだ! きっと人間になって・・・、考えておこう・・・》を最後に霊獣化した精霊は消え去った。

「和尚さん!瞑想にふけっておられるのですか?」

「えっ! はい、そうでしたが・・・」

「邪魔してすみません」

別の老人がビールを持って、

「どうぞ、一杯。こんな奥地に来ていただき、ありがとうございます。西山タダオと申します」

「どうも、どうも」断る事を知らない中嶋和尚はコップに一口つけて、

「アマゾンは長いのですか?」

「もう七十年になります。今、八十六です」

「すると、十六のときにブラジルに来られたのですね。それからずっと・・・」

「ずっとアマゾンにいます。一度も日本に帰っていません」

「一度も!」

「はい、私は、がんじがらめの日本を逃れ、自由を求めてブラジルに渡って・・・、初めからここに骨を埋めるつもりで来ました」

「自由を求め、骨を埋める決心で、それで、どうでした?」

「当初、余りにも自由過ぎて戸惑いました。・・・、どう言ったらいいのかな・・・、それは、毎日、誰もいない広ーい競技場を方向も分からず。懸命に走っている様な・・・」

「なるほど、なんとなく分るような気がします」

「自由過ぎても、戸惑いますね」

「ちょっとお聞きしたい事があります。その頃、なにか宗教的なサポートがありました?」

「いえ、なにも・・・、失礼とは思いますが、必要なかったです」

「それで、どんな状態でした? 例えば・・・、落ちつかなかったとか、心のよりどころがなかったとか、寂しかったとか・・・」

「全く感じませんでした。移住して最初の五年間は、毎日、地獄の密林で飢えと戦いながら無我夢中で働きましたから、寂しい思いをする暇もありませんでした。今、考えると、あの頃の私は牛馬の様でしたね」

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