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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2014年3月14日

 「元通りにすれば良いわけではない」。東日本大震災で被災した関係者は復興の難しさをこう表現する。県内外に避難して時間が経ち、帰郷を強く望む住民が減ったとの報を耳にすると、復興の困難さを実感する。

 被災県が「本格復興推進年」と位置づけた本年、復興計画を調整しながら、従来の形を変え、環境を整えようと模索している。完全復旧を第一としないなら、一部地区を被災当時そのままに残すのはどうだろう。30年後、50年後には世代が変わり、記憶が風化する可能性がある。そんな時、実感がこもった現場が残っていると忘れにくいのではないか。

 なぎ倒されたビル、乗り上げた船、捻じ曲がった線路。どれも震災の大きさを示す貴重な指標だ。管理の難しさはあるだろうが、写真や映像では伝わらない現実を実感させる〃歴史遺産〃として、象徴的な役割を果たすのでは。(祐)

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