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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(148)

《早速、中嶋和尚をここに呼び寄せますから、『南~無、阿~弥、陀仏~、南~無、阿~弥、陀仏~、・・・、なー、かー、じー、まー、おー、しょ~うを、こー、こー、へー、・・・』》と村山羅衆は唱えながら、傍観している小川羅衆を睨んだ。
《?!》
やっと村山羅衆の意図に気付いた小川羅衆は、まず、ジョージの車にあったパンフレットに記されたジョージの旅行社にすっ飛んだ。
中嶋和尚はいないが、ジョージより実力者のカヨ子さんがいた。
「忙しいというのに、ジョージの奴、どこへ行ったのかしら、社長のくせに会社をほったらかしにして、あのボンさんの面倒ばかり看ているんだから」
その愚痴を聞いた男性事務員が、
「カヨ子さん、社長はアパートに、また女を泊めとるとですか?」
「今度は女じゃなくってボンさんよ! 変な趣味が有るのかしら」
それを聞いた小川羅衆は男性事務員に呪い移り、
「《社長の住まいは何処ですか?》」
「トーマス・ゴンザガ街よ」
「《その何番ですか?》」
「如何して?」
「《てめぇ~がお迎えに行ってこようと思いまして。もしかしたら体をこわしていらっしゃるかも知れねーし》」
「そんな出しゃばった事しなくていいわよ。社長は殺されても死なない人だから、それにしても、進ちゃん、急に普段と違う日本語を使うのね」
「《何番です?》」
「行かなくっていいって言ったでしょう」
「《何番?!》」
「行かなくていいって・・・。会社は私一人で面倒みれるんだから」
「《何番だ! 早く教えねーと、ろくな事にならねーぞ!》」
カヨ子さんは進ちゃんの急変に驚いたが、さすが実力者で、
「なによその態度! もう絶対に教えないわ。それから、明日からもう来なくていいから、わかったわね!」
「《なに~!教えないとブッ殺すぞ!》」
「言ったわね~、勇気あるならブッ殺してみなさいよ」カヨ子さんは、怯むどころか、ブラジャーを持ち上げて無理にDカップにして胸を張った。
小川羅衆は自分の軽率な行動に後悔して、進君の身体から抜け出した。
「カヨ子さん、す、すまんかと、許さんとね」
「フン、今更機嫌取ったって遅いわよ。・・・、しかし? どうしたの? 進」
「なんか知らんバッテンが、体の調子がおかしかとー。《霊が乗り移っています》」再び、小川羅衆は進君に呪い移った。
「こんどは脅かすつもり?」
「《そんなつもりはありゃーしません。あっしぁ日本からきた幽霊で、小川羅衆と申します。ジョージさんの住まいに居る中嶋僧侶と、至急、会いたいのです。ですから住所を》」
「進!バカにしないで! 幽霊ならその証拠を見せなさいよ!」
「《これで信じますか?》」小川羅衆はお化けの定番で、進君の首を十センチほど伸ばした。
「きゃ~!」カヨ子さんは気絶してしまった。
《俺が出世出来ないのは、こんなヤボな事ばかりやっているからだ》独り言を言いながら進君に呪い移った小川羅衆は床に大の字に倒れたカヨ子さんを抱いて冷たい手でおでこを撫でた。
気が付いたカヨ子さんは震えながら、
「64番、アパート951号よ」
小川羅衆は抱えたカヨ子さんの頭を床に落とすと進君から出てジョージのアパートに飛んだ。
頭を落とされたカヨ子さんはまた気を失ってしまった。
ジョージのアパートでは、中嶋和尚が掃除を終え、仏壇のろうそくを点すところであった。

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