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「幸せの条件」の日伯の違い

 「幸せの条件は」と聞かれたら、千差万別の答えが返ってくるだろう。経済協力開発機構が隔年で発表する報告書「How’ s Life?」が興味深かった。同調査は約40カ国を対象に、経済状態と生活の質を「所得」「健康」「安全」「主観的幸福」などの11項目に分けて調べたもの。先進国は全項目においておおむね数値が高く、発展途上国や争乱のある国は数値が低いのだが、気になったのは幸福感だ▼日本で満足度が高い項目はトップから順に「安全」「所得と富」「教育と技能」と、自他共に認める安全で豊かな国だ。しかし他項目は概して低く、特に「仕事と生活のバランス」「健康状態」「主観的幸福」はランキングの最下位にある。それに大半の国で幸福度は年々上昇しているが、日本は逆にここ数年間下降を続けている▼一方、生活の質は低くても幸福と感じている人が多いのがブラジルの特徴だ。ほぼ全ての項目が最低ラインか良くて中間に位置する。だが、「主観的幸福度」が全項目で最も高いというパラドックス(論理的な矛盾)がおきている。「自分らしく」、いわば「気まま」に生きれば幸福と感じるということか。日本人が追い求めてきた経済的豊かさも治安の高さも、幸福のための必要条件ではないという証明がここにある▼優秀国はフィンランド、アイルランドなど北欧諸国やスイス、カナダなど。ほぼ全項目において満足度が高いこれらの国々に比べると、日伯ともにどこかアンバランスで、鏡の表裏のよう。「日本人はもっと気ままに生きていいんじゃない」―兄弟国のようなブラジルから、そんなメッセージが聞こえてきそうだ。(阿)

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