ホーム | 日系社会ニュース | 大西洋岸森林=森林農法の普及本格化へ=ジュサラで持続的収入を=小農支援にNPOが助成=地元の意識の低さが課題
現地視察時に剪定する有識者。農作物を手入れする技術・知識も乏しいようだ
現地視察時に剪定する有識者。農作物を手入れする技術・知識も乏しいようだ

大西洋岸森林=森林農法の普及本格化へ=ジュサラで持続的収入を=小農支援にNPOが助成=地元の意識の低さが課題

 サンパウロ州を中心とした大西洋岸森林(マッタ・アトランチカ)の保全再生と小農支援を目的に、NPO法人「VERSTA」(東京都)による『ジュサラ椰子樹を主体とした小農の森林農法(アグロフォレストリー)推進プロジェクト形成事業』が本格的に始動した。今年から正式に3年間の助成金交付(初年度は約200万円)を決め、8月18、19日に現地で意見交換や視察を行なったが、地元住民の関心の低さなど課題が浮き彫りとなった。

VERSTAが2年前に設置協力した苗床は今や〃無法地帯〃に

VERSTAが2年前に設置協力した苗床は今や〃無法地帯〃に


 森林農法は、複数の商品作物を重層的に一つの畑に植えることで、自然に近い環境を残した形で生産をする、共生型農法としてアマゾン地方を中心に注目を集めている。
 VERSTA専務理事の小野瀬由一さん(61、山形)は、セッテ・バーラス文協で行なわれた意見交流会で関係者約30人を前に、「貧困コミュニティー(小農家)の安定的収入支援」「違法伐採による環境破壊が顕著」と同地での支援理由を強調し、「本格始動の1年目。これからの展望と現状確認、課題を議論したい」と呼びかけた。
 地元農家や研究者が集い問題点を確認した。その中で10年前にサンパウロ市から同村へ移り住み、森林農法に強く賛同するジェラルド・フランシスコ・デ・アギアールさん(59)は、「森林農法の確立は必要だが、盗伐意識や環境保全の関心が低い若い世代への教育、注意喚起も必須」と危機感を訴えた。
 サンパウロ州森林院元総裁で、VERSTAブラジル側代表を務める山添源二さん(79、二世)は「70年代からパウミット違法伐採に関する法整備が進められたが機能しなかった」と述べ、パラー州トメアスー移住地から駆けつけた森林農法の先駆者、小長野道則さん(56、鹿児島)も、「これまでは目先の収入を得るために、(違法でも)採った者勝ちだったのでは」と意識の低さを問題点に挙げる。
 ジュサラ椰子樹の果実は、健康食品として注目のアサイーより栄養価が高く、2、30年間も収入源となる。ただし生育まで5、6年(バナナは最速1年、コーヒーは3年ほど)を要することが一因で、地元はこの計画に対し関心が薄いよう。
 2年前に試験的に植樹したジュサラは成長が見られたが、VERSTAが整備協力した苗床は、世話人が病に倒れたことで管理が行き届かず、各植物の苗が勝手に全て売られていた。
 小長野さんは「組合もないため住民の意思統一図れていない。文協、市役所からの参加がないこと残念。土壌質はトメアスーよりはるかに良く、もったいない。絶対成功するのに…」との疑問を口にした。
 同プロジェクトは、日本の環境庁管轄の地球環境基金から約150万円の助成を受け、セッテ・バーラス市リオ・プレット村で12年7月から試験的に動き出している。

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