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パラグァイのオラシオ・カルテス大統領(Foto: Jose Cruz/Agencia Brasil)
パラグァイのオラシオ・カルテス大統領(Foto: Jose Cruz/Agencia Brasil)

第1回欧州投資フォーラム=事業投資に最適国との評価=「法制遵守の真面目な国家」=パラグァイ 坂本邦雄

 去る10月23と24日の両日、アスンシォン隣接のルケ市在のコンメボル(南米サッカー連盟本部)のコンベンションホールで、EUROCHAMBERS(欧州連合商工会議所)の第1回欧州投資フォーラムが、EU・欧州連合及び同会議所の資金と技術サポートを以ってパラグァイ国商工省に依り招集された。

 同フォーラムにはイタリア、スペイン、フランス、デンマーク、オランダ、ベルギー、イギリス等からの建築、繊維、皮革、運輸、工事など多岐に及ぶ業界の事業投資家60人以上に加えて、約500人のパラグァイや地域各国の企業家が参加した。
 ヨーロッパ連合(EU)のアレッサンドロ・パルメロ駐パ大使によると、現在ヨーロッパからのパラグァイへの直接投資は9億6千30万ドルに達し、2013年度比6・6%増を記録しており、今年末には固定設備投資は10億ドルを超える予想だと言う。
 ちなみに、2012〜13年度はパラグァイとヨーロッパ連合間の貿易は30%も増加しており、8億2300万ドルの輸入に対し、輸出は13億5100万ドルに達し、パラグァイの輸出超過だった。

未来の食糧生産基地に

 グスタボ・レイテ商工大臣はフォーラム開会のスピーチで、現在パラグァイは外国の企業進出には素晴らしい有望性や雇用創出の機会を提供する絶好の外資誘致国であると強調した。
 パラグァイは他の近隣諸国に比して断然有利な外資導入条件を定めている以外に、現政府は今こそ国の確実な「経済離陸」を達っせんが為に、内外資本に限らず起業認可の面倒な官僚的手続の迅速化を合理的に進めている。そして、パラグァイはシンプルな「法制遵守の真面目な国家」のイメージアップに尽くしている。
 我が国は悪夢の独裁政権後の25年間に亘る民主政体移行への歴代政権の許で、確かにその道程(みちのり)は未だ程遠いものがある。その一方で、遅々としながらも開かれた民主主義の定着が見られるのも事実で、幸いこの25年間に有意の若い世代が「独裁の怖さ」を知らずに育って来た。
 次いでレイテ商工相は、現政府は「最高の社会政策」は貧困の削減、即ち「尊厳なる職」にあり、その為の雇用創出は、「優れた経済政策」に依らねばならない。だが、それに相応する有利な環境の構築には、優良事業投資の促進・誘致が前提である―とのビジョンに立脚していると指摘した。
 同じく我が国は隣接各国よりも低い税負担、戦略的好立地条件、豊富な電力、経済成長の持続性や法的保証の許に、各社会分野が認める自由経済市場に基いた社会開発政策の振興に努めている。
 2030年には全世界人口の59%を占めるに至るであろう中産階級層の仲間入りする49億の人達の、日毎に増える需要に応じる重要な食糧生産大国にパラグァイはなると見られ、従い「絶好なチャンスの国」たる条件を備えているのである。

南米唯一、二国間の一般特恵関税制度を享受

 また、レイテ商工相はヨーロッパはその情勢変動の明暗に拘らず、依然として世界の優勢な大国エリアである事に変わりなく、そこでパラグァイは地域各国の中でも唯一EU各国との二国間(一対一)の一般特恵関税制度(GSP―プラス)の恩恵を享受している国であると述べた。
 このフォーラムでは参加各国代表者の講演や活発な質疑応答が行われたが、その中の二つ三つを拾って見ると、DG・エンタープライズ国際協力部門のハイメ・シルバ顧問は、最近のパラグァイ国の経済成長に注目し、ラ米諸国中で最も開放された経済政策を推進している国だと評価した。
 そして、パラグァイはメルコスールの他のメンバー諸国と共に欧州連合との画期的な共同貿易協定締結の交渉に当っている。
 これは、パラグァイは2014年以降、一般特恵関税制度(GSP―プラス)に依って、他のメルコスール加盟国よりもEU諸国への有利な輸出が出来る立場にありながらの上での話である。現下、外のラ米諸国は平均してパラグァイ程に有利な貿易便宜を得ていない。
 同じく、パラグァイの安い豊富な電力、労働力や低い税負担、秩序あるマクロ経済運営、低いインフレ率と限定された財政赤字などのメリットに触れた。
 カルテス政権は就任早々インフラ整備工事の活性化を目差す「官民提携法」を公布し、社会分野も巻き添えた民間資本の活用を図った。
 このパラグァイに対し、EU・欧州連合は差し当たりルケ市の「シルビオ・ペッチロッシ国際空港」の近代化工事のFS・事業化調査の実施を支援する用意があるとハイメ・シルバ氏は締め括った。

4%以上の成長を維持

 一方、ブラジルのゼツリオ・バルガス財団の経済協会貿易研究室(仮訳)の専門家リーヤ・ヴァールス女史は、一般にラテンアメリカのビジネス環境が近来悪化している中で、パラグァイ国はここ2年間その経済情勢は平均指数以上の成長振りを見せていると会場のヨーロッパ企業家グループに説明した。
 そして、パラグァイは南米諸国中で、最も好調な経済成長国の一つに数えられ、今やコロンビア、ペルー、ボリビアに続いて第4位にランクされる発展途上国であると述べた。
 しかし、更なる可能性がありながら、その存分な成長の足を引っ張っているのは経済政策に対する不信、インフレ、需要と貿易競争力の不足、外部の通商障害に加えて熟練労働者の不足などが挙げられる。
 なお、リーヤ・ヴァールス専門家は、熟練労働者の不足及び企業の国際市場での競争力の不足はパラグァイに限った事ではなく、特例を除きラ米諸国全体に共通した問題であると指摘した。
 WB(世界銀行)に依るパラグァイの2014年度の経済成長率の予想は4・8%で2015年度は4%、そして2016年度は4・3%である。
 何れもラテンアメリカ諸国の平均成長率を上回るもので、パラグァイ経済の成長持続性を示している。
 肝心なのは、企業活動の安定に必須とするビジネス環境の改善を以って企業運営上の制度的保証を確立する事である。

課題は熟練労働者不足とインフレ未整備

 他方、今回の第1回欧州投資フォーラムの結果の「厳密な診断」として、未だ改善すべき諸問題はあるが、スペインのサラマンカ大学のホセ・イグナシオ・サンチェス-マシアス経済学教授は、「今こそパラグァイに投資する絶好のチャンス」だと評価した。
 そして、天然資源、肥沃な土地、気候条件、豊かな水資源やエネルギー、好立地条件、羨むべき質的人口、及び健全な財政・金融部門などの特典を挙げた。
 なお、これ等の特質に加えて近年、なかんずく最近数カ月に於いて、政府が執った規制政策で、例えば外国資本獲得の為の国際債券の発行に踏み切った事などが特筆される。
 同じく、現政府の税法改革、マキーラ・仲介加工貿易振興法、官民提携法、財政責任法の適切な適用や制定の効果が相当に表れ、外国企業のパラグァイへの進出に好ましい魅力的なビジネス環境を醸成している。
 しかしながら、インフラ整備や熟練労働者の不足など未だこれからの試練の道程は長く、人的資源の養成、若者達の雇用創出、下層社会生態系の再編浄化などの関連諸課題が根強いことも否めないと、サンチェス-マシアス教授は述べた。

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