ホーム | 日系社会ニュース | コクエラ入植95周年祝う=ふるさと祭りに2万5千人=移民史に貴重な一頁記す=「サンパウロ市支える多くの人輩出」
感嘆しながら農産展出品物を見る来場者
感嘆しながら農産展出品物を見る来場者

コクエラ入植95周年祝う=ふるさと祭りに2万5千人=移民史に貴重な一頁記す=「サンパウロ市支える多くの人輩出」

 今年入植95周年を祝うコクエラ日本人会(コクエラ農村協会、斉藤アルマンド会長)は同会館敷地全体を使って8、9日の両日、「第24回ふるさと祭り」(奥山マリオ実行委員長)を開催し、約2万5千人が訪れる賑わいを見せた。約100家族が会員で、全員が農家という現在では珍しい会形態を保つ。野菜や果実、花卉を栽培してモジ市やサンパウロ市に出荷する近郊農業の典型地域だ。

品評会のテープカット(右から4人目が斎藤会長)

品評会のテープカット(右から4人目が斎藤会長)


 この祭りは、同市の農業イベントとしては最大、目玉の農産物品評会には見事に育てられた市内農家の野菜などがずらりと並べられ、来場者は感嘆しながら鑑賞した。敷地いっぱいに農機具や日本食等約100軒の出店が並び、新鮮な野菜が販売された。
 初日午前10時の開会式にはルイス・ゴンジン州議、モジ文協の幸村ペドロ会長(市議)、在聖総領事館の飯田茂領事部長らが出席し、斉藤会長は「1919年、鈴木重利一家の第1回入植を皮切りに始まった、モジ最古の入植地。今も農業を基本に生活し、95年目の今年も皆の協力でこの祭りが開催された」と挨拶した。
 飯星ワルテル下議に続いて挨拶した地元の安部順二下議は「20回続いた桃祭りから数えれば、なんと44回目の伝統を誇る祭り。農家は食糧生産者、我々消費者は感謝しなくては」と熱く語った。
 市長代理のマルコ・ベルタイオリ副市長も「今のモジ市の発展は日本移民の貢献のおかげ。コクエラ農村協会は市で最も敬愛される組織」と讃えた。来賓と主催者代表らは農産物品評会のテープカットをし、ゆっくりと見て回った。
 地元でレタス栽培をする奥山政行さん(67、二世)は「気候が良いから365日出荷できる。ハウスでなく露地栽培だから味が違う。今年は雨不足だがこの辺で川の水を使っている人には影響は少ない」と語った。
 今年、復旧工事が完成した同地のお茶屋敷を建設した揮旗深志の娘・佐々木ゑみさん(90、二世)=サンタイザベル在住=も来場し、「同郷の今井五介さん(貴族院議員)が来伯した折に『お前の好きなようにやれ』と土地を買ってもらい、レジストロの成功を見た父が紅茶栽培を本格化させるためにお茶屋敷を建てた。すでに呼寄せていた同郷の宮大工・花岡一男さん一家を敷地内に家を建てて住んでもらい、言葉に尽くせない苦労を経て建設した」と懐かしそうに振りかえった。
 元台湾総督府高等官三等の祖父・渋谷信吾さんから同地で日本語を習った渋谷仁相談役(77、二世)は「30年前は400家族の会員がいてすごく活動が盛んだった」と思い出すう。同地生まれの坂田正雄さん(83、二世、元茨城県人会長)は「最盛期を支えた人たちはみな亡くなった。ここから多くの人が輩出してサンパウロ市の日系団体を支えた。3年前からデカセギが沢山帰ってきたが会に入らない」と嘆いた。
 イタケーラ在住の山田和枝さん(88、岡山)は「渡伯した当初、お茶屋敷で働いていたんです。ここは特別な場所、今でも毎年この祭りに来てますよ」と故郷を懐かしんだ。

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