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コロニアの多様な声聞く=ジャパンハウスに提言=日本広報施設に何求めるか=それぞれの思惑や期待は

 日本外務省が世界の主要6都市に情報・広報戦略の拠点となる「ジャパンハウス」(仮称)を新設することが14年に明らかになった。同年8月に中南米を訪問した安倍晋三首相の意向もあり、当地サンパウロでも15年内の工事開始、16年の開設を急いでいる。同施設の方向性について外務省広報文化外交戦略課長の新居雄介氏が9月、邦字紙向けに説明会を行なった。アニメや漫画文化、芸術分野、最先端技術、地方の魅力などを発信し、対日理解の基盤を強化することで親日家の育成を図る考えだ。その会見で強調したのは「日系社会と協力して」ということ。コロニア側はこの動きをどう受け止めているのか――多様な声を集めてみた。

役員と本橋会長(前列左から3人目)

役員と本橋会長(前列左から3人目)



〃真の味〃を求める県連

 「ブラジル人に対して本物の日本文化を示すために、日本政府には食イベントや運動会など各県人会行事を利用してもらいたい」と語るのは県連の本橋幹久会長。民間委託となるため、「コロニアがどれだけ関われるだろうか」と戸惑いも見せるが、期待感は高い。
 文協フォーラムや商議所昼食会では梅田邦夫・駐伯大使から、また海外日系人大会では世耕弘成官房副長官から日本祭りを継続できるよう、協力したい意向が伝えられたという。「日本政府からコロニアへ高い関心があるのは事実なので、ジャパンハウスも中途半端な意思はないように感じた」と〃本気度〃を捉えている。
 「日本祭りでは郷土食ブースを展開しているが、必ずしも本来の味ではない。ジャパンハウスを通じ、日本政府の顔が見えるような形で祭りをできれば『これぞ日本食!』と自信を持って示せる」との希望を明かした。
 昨年10月の海外日系人大会には、英国ロンドンからも参加者が訪れた。同地も施設設立へ動いているが、「ロンドンは現地日系社会が交流できる施設を期待しているようだった」という。「世界最大の日系社会を抱えるサンパウロの場合、交流の場はすでに多数ある。ロンドン、米ロスなどとは違った運営となる」と述べた。
 最も強調したのは「日本は世界に誇れる最新技術を持つ」ということ。「韓国や中国に負けないよう日本の素晴らしさを発信してほしい」との期待を込めた。


「施設の拠点を文協に」

木多会長

木多会長

 文協の考えはどういったものか――。木多喜八郎会長、林まどか副会長らの希望は共に、「文協ビル内に事務所を設置してほしい」というもの。
 「昨年改修した大講堂や多目的ホール、移民史料館や図書館もある。すでに設備が整った文協を最大限活用できる」と理由を挙げた。「多くのボランティアに支えられ、長年築いてきた体制もある」と、運営協力にも自信を見せる。
 さらに文協は援協診療所があったビル地下に、市民憩の場を提供すべく『文化空間プロジェクト』を計画中。漫画や日語書籍を置き、お茶も飲めるくつろげる空間作りを目指しており、「ジャパンハウスには政治、経済や最新技術の情報発信をして頂きたい」と住み分けも望んだ。
 茶道裏千家ブラジルセンターの代表夫人でもある林副会長は、「先日トヨタの企業展で茶道の実演を行なった。ジャパンハウスが基盤となり企業とも一体となれば、より幅広く文化普及ができる」と、進出企業も絡めた取り組みの必要性を指摘した。


「日本、コロニア、聖州の三位一体で」

宮原補佐官

宮原補佐官

 安部順二連邦下議の宮原ジョルジ補佐官は「文化発信基地という目的に加え、将来的には在聖総領事館やJICA、JETROに、文協などもそこに入るような施設ができれば、コロニアにとっても意味のある建物になるのでは」と提案する。
 「すでに文協には移民史料館があり、日本館などで文化活動を行なっている。設立時点ではコロニアと別物として考えても良いのでは。ゆくゆくは在聖総領事館が間に入り、上手く融合することが望ましい」と話したが、「ただし、ジャパンハウスの全貌がはっきり見えてこないから何とも言えない部分も」とつけ加えた。
 08年の移民百周年時には『日伯総合センター』というコロニア集約施設の設立案が頓挫した前例もある。宮城県人会の中沢宏一会長は「日本政府がようやく重い腰を上げたのだから、傍観する見方を止め受け入れ態勢を整えなければ」と協力的姿勢を呼びかけた。「日本政府とコロニア、さらに聖州政府とも連携して三位一体でという体制が望ましい」とも語り、「コロニアの結びつきを強められるチャンス」と見ている。


最上級のレストランを!

 サンパウロ青年図書館理事の天野鉄人さん=コロニア・ピニャール在住=は、「ジャパンハウスに海外最上級の日本料理レストランを作り、世界のトップクラスの人々の社交場にすることを提言する。総領事館直営で、優秀な若手の料理人を日本で選び、運営を一任する形がよい」と語った。
 「トップクラスの人々のサロンとなることで、日本国の国威を上げるとともに、380数社の日本進出企業にとっても実利につながる投資になる。いずれ本物の『日本館』を建設するまでのつなぎの役割を果たしてほしい」との独自の考えを披露した。


日本料理講習会の開催を

須原さん(左)と上芝原さん

須原さん(左)と上芝原さん

 農協婦人部連合会(ADESC)の須原マリーナさん、上芝原初美さんは「日本からシェフを呼んで、料理講習会で日本食を伝授してほしい」と期待している。
 また「子どもが集まる空間にしてほしい。ゲームやフィギュアは値段も高いため、大人向けだから、折り紙など子どもが遊べる場所にできれば、自然と大人もついてくる」と提案した。
 岩手県人会の多田マウロ副会長などは、「日本酒が試飲できると魅力的。本物の日本酒が手軽に飲めるような場所なら、大勢の人が集まるのでは」と話した。


記者雑感

 広報施設『ジャパンハウス』への期待を吸い上げるべく、コロニア各人に取材したが、あまりに知名度が低すぎた印象だ。二世はおろか一世でも初耳という状況で、大方の反応は鈍かった。
 ただ若い三、四世に趣旨を説明すると「ぜひメイドカフェを」という声も。アニメファンなど、限定された層を狙う運営方法も、検討する価値がありそうだ。
 今後コロニアはどのように関ることが出来るのか。日本政府は当地日系社会との協力関係を、どれだけ本気で考えているのだろうか。今年中に開設地や予算など、大まかな枠組みが決まる。


相撲中継を見られる場を

猫塚さん

猫塚さん

 現在は設置場所の選定中で、具体的な中身もまだ検討段階だ。そんな中、一般の日系人らはどのような期待を抱いているのか。伯国相撲連盟の猫塚司強化部長などは、相撲中継を見られる場を望んでいる。
 「伯人力士を含め、ブラジルに住む一般の若者がNHKを見る機会は少ない。相撲中継が見られる場を提供できれば、より相撲文化が身近なものになる」と話した。

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