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ブラジルで「掃除」の意味を再考

 カーニバルの祝日を利用して、同僚と編集部の大掃除をした。毎朝掃除婦が来るのだが、ゴミの回収やトイレ掃除など最低限のことしかしないので、「自分たちでやるしかない」と一念発起。一部壁を白く塗り替え、床を磨き、不要品を処分して整理整頓した▼一日中働いてヘトヘトになったが、「部屋が明るく広くなった。空気感まで違う」とお互い顔を見合わせてその変化に驚いた。「やっぱり掃除は基本だなあ」と実感した瞬間だ▼日本の精神文化は掃除を重んじる。学校では生徒が自分達で教室を毎日清掃するし、「部屋の乱れは心の乱れ」と家庭でも掃除を習慣付けられる。また「掃除は運気を呼び込む」と言うように、単なる実用性以上の意味づけもある▼仏教、武道、茶道など、日本の精神文化の根本をなすものもしかり。仏教における掃除は主要な「作務」の一つだし、武道では人格鍛錬の一環だ。八百万の神は、祭壇だけではなく、家の中にもあまねく宿ると信じられているので、住まいも清浄に保つのが良しとされる▼「汚れ」を「けがれ」と読み、「清浄性」を「美」とする感性は、日本独特のものかもしれない。道端はゴミだらけ、壁面は落書きだらけという環境だと気分が滅入ってしまうのは、やはりその感性ゆえだと思う▼お釈迦様も「そうじ五功徳」を説いたとか。それは、掃除は(1)自分の心を清める(2)他人の心を清める(3)周囲の環境が活き活きする(4)周囲の人の心も物事も整う(5)死後、必ず天上に生を受ける、というもの▼慣れと怠惰で、つい現状に甘んじてしまうのも人間だ。だが、そんな時は思い切って環境と共に心も磨き、周囲ごと運気アップを図りたい。ぜひ首都の政界も〃清掃〃を。(阿)

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