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無頼小説もどきのツワモノがごろごろする旅

 県連故郷巡りに同行取材し、多くの参加者と話す機会に恵まれた。最も印象に残ったことの一つは、朝食時にたまたま一緒に座った戦後移民の参加者二人による強盗経験談義だった▼一方は小柄な女性。店を経営していた頃、繁盛し始めると拳銃強盗団から頻繁に襲われるようになった。「お金がたくさん入ると幸せになれるというのはウソ。むしろ心配ごとが増えた。会計の机にピストルを忍ばせ命がけ。従業員がグルになっていると分かり、店を売った」▼もう一人は口数の少ない男性。ある生活必需品の販売代理店を経営していた時、大サンパウロ市圏の数ある代理店網で売り上げ1位を記録するほど繁盛した。「毎日トラック3台分の商品を売り切った。そしたら拳銃強盗が毎週襲ってくるようになり、妻が撃たれて重傷を負った。家族皆に防弾車を買い、自分も常時拳銃二丁を携帯した。警察が駆けつけた時にはとっくに犯人は逃げていた」と振りかえる▼対策は「蛇の道は蛇」だった。サンパウロ市には北東伯で殺人を犯してきた逃亡犯がいる。「そんな奴を従業員に雇って、強盗の一味らしいのが来た時、『俺はここで働いている。手を出すな!』と言わせたらパタリと来なくなった。犯罪者同士は目を見たら分かるんですよ。その代りに、奴を警察から守ってやった」という▼無頼小説顔負けの生涯を自分史に書くことを薦めると、苦労人らしい注意深さで眼光鋭く「どこに敵がいるか分からないから、たとえ日本語でも手の内を明かすのは危険すぎる」といい放ち、〃普通の人〃のニコニコ顔に戻った。なにげないカフェ・ダ・マニャンでこんな話が出るのは、まさに故郷巡りの醍醐味だ。(深)

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