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笠戸丸移民、一世紀の物語

 「初期移民は苦労した」「それに比べたら私ら戦後移民は―」という話す人たちは移住当時、実際に体験を聞いたのかも知れない。ただ、移民107周年を迎える今、その苦労は想像するしかないし、漠然としたイメージしかない。そうした意味で、未来に残すべき本が出版された。笠戸丸・沖縄移民の足跡を徹底調査した『笠戸丸移民 未来へ継ぐ裔孫』(赤嶺園子著、306頁)だ▼「先人の苦労を忘れてはいけない」と戦後移民の赤嶺さんが数年をかけ、自費と自力で325人の足跡を辿り、子孫に聞き取り調査を行った。草に分け入り墓石を探し没年を確認、線香を手向けた。供養取材とも鎮魂の旅ともいえる。多くの証言に苦労とささやかな幸せが滲み出す。しかし、「悲惨すぎて書けなかったエピソードもあった」という。消息が全く分からなかった家族も多い▼編集作業は、小紙編集部が担当した。この本は、主人公である移民たちが今際のときまで想い続けたであろう沖縄で日の目を見るべきだと思った。提携紙『沖縄タイムス』が、それをしっかりと受けとめ、発行元となってくれた。名ばかりだった提携関係が名実共となり、赤嶺さんが繋ぎとめた一世紀の物語を、タイトル通り、「未来へ継ぐ」ことができた▼沖縄県人だけの調査記録だが、県人を問わず読まれて欲しい。登場するエピソードは、多くの初期移民が体験したことに違いないからだ。笠戸丸移民もその家族も喜ばれていることだろう。改めて、赤嶺さんの仕事に敬意を表したい▼ニッケイ新聞(11・3340・6060)、ソールナセンテ人材銀行(3276・5155/3208・5266)ほか、各日系書店で販売中だ(80レアル)。ポルトガル語版もあり、同人材銀行だけの販売。(剛)

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