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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(1)=多く方々からの助力に感謝

  前書き

『百年の水流』の表紙

『百年の水流』の表紙

 まったく歳月の過ぎ去るのは早いもので、2006年の暮れ、拙著『百年の水流』を出版して以来、すでに10年近くになる。この本は、その数年前にサンパウロ新聞に連載した記事を推敲、新材料を多数盛り込んで作成した。この国の日系社会の一世紀の歴史の「流れ」を捉えることが、主たる目的であった。ポルトガル語版や改訂版を出すこともできた。
 何れも重すぎるほどの分厚さであったが、それでも後日、補筆すべき点が多々あることが気になりだした。特に地方の開発前線に関する描写の不足を感じた。筆者は歴史の流れを捉えることに懸命で、注意がサンパウロ市内に在った各種の中央機関の動きに傾き、開発前線に対しては散漫になっていたようだ。
 しかし日系社会の大部分は前線に在り、歴史を築く諸事業の多くは、そこで展開されていたのである。この点を重視しなかったのは迂闊であった。そこで以後、少しずつ資料蒐集と取材を進めてきた。その結果を今回ニッケイ新聞に連載することになった。
 迂闊といえば、もう一つ手落ちがあった。『百年の水流』の出版に力を貸してくれた方々への御礼と成果報告に関して……である。御礼は未だに一部の人にしかしていず、成果報告に至ってはゼロである。これは、まことに非礼なことであった。そこで、この開発前線編の連載をチャンスに、本題に入る前に、それをさせて戴くことを思いついた。
 で、まず御礼であるが、力を借りた一例として、こういうことがあった。初版本を出した折、ブラジル各地の日本の総領事館や領事館が何冊ずつか取寄せている──という噂を耳にした。(記事に関し、何か厄介な問題が起きたか?)と危惧したが、間もなくブラジリアの島内憲大使が、この本に目を通し、直ぐ各館の館員に読むように勧めてくれた──ということが判った。大使に本を贈ってくれたのは今井眞治弁護士であった。
 大使は、後にポルトガル語版にメッセージを寄稿してくれた上、二十冊購入、さらに出版記念パーテー(於文協、ニッケイ新聞社主催)に、態々、ブラジリアから出席してくれた。大変なご厚誼であったわけだが、これに対して、筆者は通り一遍の挨拶しかしていない。
 この一例に限らず、資料蒐集、取材、執筆、印刷、販売の過程で、実に多くの方々から助力を受けた。しかし、その数が余りにも多く、また筆者の横着さもあって、殆どが、そのままになってしまっている。ここで改めて謝罪し、かつ深く感謝申し上げます。
    ◎
 次に成果報告であるが──。
 本の販売は極めて順調であった。当初、限定版の予定であったが、それでは到底足りなくなり、何度も増刷した。日本語の出版物は、近年、読者人口が激減、流通ルートも皆無に近くなっており、一千部出ればベストセラーと言われるが、『百年の水流』日本語版は、その数倍は出、今も改訂版が少しずつ売れている。ポ語版は品切れとなり「どうしても欲しい。なんとかならないか」という問い合わせが時々あるほど。
 ただ経済的には、資料蒐集、取材、執筆に十年以上かかったため、帳尻は大赤字で、その後始末に今も四苦八苦している。が、それは覚悟していたことである。成果として大事なことは、社会の関心を惹くことができたかどうか、記事の内容が読者のために役立ったかどうか──である。
 これについては、当初、知人たちから「どこへ行っても、皆『百年の水流』の噂をしている」と教えられた。また、以後長く、会う人の殆どから「良い仕事をしてくれた」という意味の言葉を頂戴した。(つづく)

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