ホーム | 日系社会ニュース | 日本祭り・郷土食ブース=(上)=44県が地元特産品をPR=経費高騰にもめげず奮闘
愛媛が販売した「えひめロール」。中身がぎっしり詰まっているのが特徴だ
愛媛が販売した「えひめロール」。中身がぎっしり詰まっているのが特徴だ

日本祭り・郷土食ブース=(上)=44県が地元特産品をPR=経費高騰にもめげず奮闘

 日本祭りの目玉の一つでもある、各県人会による郷土食。今年は3県(茨城、京都、島根)を除く44県人会が参加した。会場改修に伴う出店料の値上がりに加え、換気扇の設置義務や光熱費といった負担が増える中、地元・特産品をモチーフにした手作り食品を販売した。本紙編集部が取材した郷土食を上・下に分けて紹介する。

いなし寿司を手にする福井の橋本副会長

いなし寿司を手にする福井の橋本副会長

 昨年参加を見送った愛媛は、「えひめロール」という菓子を用意した。見た目はロールケーキそのものだが、地元の松山市では郷土菓子「タルト」という名で親しまれるという変り種だ。あんこ(120パック)、グアバ(30パック)、生クリーム(同)の3種を揃えた。
 中矢伝会長は「ブラジル人用にと思ってあんこ以外も用意したが、あんこを好んで買うお客さんも多い。昔から甘い豆は敬遠されがちだったけど、今は受け入れられている」と好調な売れ行きを喜んだ。
 福井は飲食店経営者の県関係者が提供したすしマシーンを活用し、いなり寿司などを販売。油揚げは輸入物で甘めの味付けにしたという。焼きそばのプラスチック容器も日本製というこだわりようで、橋本巨太郎副会長らは「レンジで加熱しても、簡単には崩れません」と自信を見せた。
 神奈川は横浜中華街にあやかって、肉まん3千個を外注した。まわりの皮はほんのり甘めで、中のあんは醤油ベースのしっかりした味付け。白又考範会長は「大き目サイズを特注し、蒸し方にも工夫を凝らした。詳しいことは秘密です」と笑顔を見せた。
 海岸でとれる三陸わかめが有名な岩手は、毎年うどんに乗せて特産品をPRしている。会員家族の訪日時、大量に持ち帰ったことで今年も販売が可能になった。改良を重ねた千田曠曉会長特製の出汁はもちろん、肉厚で弾力があるわかめは、日本祭りでしか味わえない。酒蔵「南部美人」の久慈浩介社長が協力した地酒販売や、ベジタリアン向けのコロッケを扱う取り組みもあった。
 大分はトリ飯、牛たたきの他、会員家族特製の干し柿を販売した。サンパウロ州ナザレ・パウリスタ在住の浄念眞理子さん(67、滋賀)が生産・加工する柿は、アチバイア市のいちご祭りでも好評。季節が真逆のため日本へのお土産としても人気があるという。
 「雨が少なくて、傷んだ柿も多かった」と不良に苦しんだようだが、自然の甘味が強く日本の懐かしい味を再現していた。普段は丸ごとの干し柿を販売するが、今回は傷物を切り分け袋詰めにした。ただ「かえって食べやすい」と、ブラジル人来場者には受け入れやすい様子だった。(続く)

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